
CFS/ME診断に96%の精度!画期的な血液検査、ロングCOVIDへの応用も期待される
慢性疲和症候群(CFS)、または筋痛性脳脊髄炎(ME)としても知られるこの疾患は、日常生活を著しく困難にする疲労感を特徴としており、休息によっても改善されません。この度、科学者たちは、この疾患を96%の精度で診断できる画期的な血液検査を開発したと発表しました。この進歩は、診断が困難であったCFS/MEの患者にとって、希望の光となる可能性があります。
これまで、CFS/MEの診断は、その複雑な症状と明確な診断基準の欠如から、しばしば長期にわたる困難を伴ってきました。多くの患者が、自身の症状を過小評価されたり、「気のせい」だと診断されたりすることに苦しんできました。この新しい血液検査は、エピジェネティックマーカーを分析することで、CFS/ME患者に特有のパターンを特定します。これにより、これまで診断が難しかった患者への迅速かつ正確な診断が可能になり、早期の支援と効果的な管理への道が開かれます。
画期的な血液検査の開発
英国イースト・アングリア大学の研究者たちは、バイオテクノロジー企業オックスフォード・バイオダイナミクス社が開発した技術を使用し、重度の症状を持つ47名の患者と61名の健常者から採取した血液サンプル中のDNAの折り畳み方を分析しました。DNAの折り畳み方、すなわちエピジェネティックな構造は、遺伝子のオン・オフを制御し、疾患の有無に関連するユニークなパターンを示すことが明らかになりました。このパターンに基づいた検査は、CFS患者の92%、健常者の98%を正確に識別し、全体として96%の精度を達成しました。
長引くコロナ(ロングCOVID)への応用期待
この研究の主導者であるドミトリー・プシェジツェツキー教授は、この血液検査がCFS/MEの診断を大きく変える可能性を秘めていると述べています。さらに、教授は、この研究が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の後遺症である「ロングCOVID」の診断にも応用できる可能性に期待を寄せています。ロングCOVIDは、CFS/MEと同様の症状を示すことがあり、この血液検査技術がロングCOVIDの正確な診断にも貢献することが期待されています。
今後の展開と課題
この画期的な血液検査の開発は、CFS/ME患者にとって大きな希望をもたらす一方で、いくつかの重要な課題も浮き彫りにしています。さらなる検証と、その実用化に向けた動きが注目されます。
独立した検証の必要性
エディンバラ大学のクリス・ポンティング教授は、この検査結果が画期的であると認めつつも、さらなる臨床研究による独立した検証が必要であると指摘しています。特に、検査対象者の性別、年齢、その他の要因におけるCFS患者と健常者との間に見られた有意な差について、より慎重な検討が求められています。臨床応用を視野に入れる前に、より適切に設計された独立した研究での検証が不可欠です。
コストとアクセス
ポンティング教授は、たとえ検証が完了したとしても、この検査のコストが高額になる可能性も示唆しています。推定では、1,000ポンド(約18万円)程度になる可能性があり、これが患者のアクセスを制限する要因となるかもしれません。この画期的な技術が、経済的な理由で利用できない人々を生み出さないよう、費用対効果や公的医療保険の適用なども含めた、包括的な議論が必要です。
診断技術の進歩がもたらすもの
今回の血液検査の開発は、これまで「気のせい」と片付けられがちだったCFS/MEという疾患に対する、科学的な裏付けを提供するものです。これにより、患者の苦しみが正当に評価され、適切な医療へのアクセスが改善されることが期待されます。また、ロングCOVIDをはじめとする、未解明な疾患の診断技術開発にも弾みをつける可能性があります。