
なぜ中央銀行はこぞって「金(ゴールド)」に回帰するのか?世界が警戒する「ドル支配の終わり」と地政学リスク
世界的な地政学リスクの高まりや通貨ドルの信頼性に対する懸念が深まる中、各国の金融当局が「金」の保有を急速に増やしています。世界黄金協会(World Gold Council)が2026年6月に発表した最新の調査レポートによると、中央銀行が金を保有する目的として「危機時のパフォーマンス」を重視する傾向が過去最高に達しました。この記事では、金が今なぜこれほどまでに求められているのか、その背景にある中央銀行の思惑と、今後の金融市場への影響を読み解きます。
中央銀行による「金回帰」の現状と主要データ
危機への備えとしての金
世界黄金協会の最新調査によると、回答した中央銀行の90%が、金を保有する主要な理由として「危機発生時のパフォーマンス」を挙げています。これは過去の調査と比較しても非常に高い水準であり、世界的な経済的・地政学的な不確実性が、当局の戦略に直接的な影響を与えていることを示しています。
今後の買い増し計画が急増
調査対象の中央銀行の45%が、今後12ヶ月以内に金の保有量を増やす計画であると回答しました。また、89%が世界全体の公的機関による金保有量は今後も増加し続けると予想しており、金に対する需要が短期的かつ構造的なものであることが浮き彫りになっています。
ドル依存からの脱却姿勢
調査の背景にある重要な因子として、米ドルのシェアに対する見通しが挙げられます。実に74%の中央銀行が、今後5年間で世界的な外貨準備における米ドルのシェアが緩やか、あるいは大幅に低下すると予測しており、ポートフォリオの多角化として金へのシフトが加速しています。
中央銀行の動きから見る今後の展望と金融の本質的変化
「資産の兵器化」がもたらすパラダイムシフト
今回の調査結果の根底には、2022年のロシアのウクライナ侵攻以降に生じた「ドルの兵器化」に対する強い警戒感があります。外貨準備としてのドル建て資産は、国際的な制裁や外交関係によって凍結されるリスクがありますが、自国内で保有する物理的な金はその制裁対象にはなり得ません。この事実は、現代の国際金融システムにおける「安全」の定義が、信頼から「物理的な実物資産の所有」へと回帰していることを強く示唆しています。
今後の展望:金価格への持続的な追い風
過去4年間、中央銀行は毎年平均1,000トンもの金を購入しており、これは前 decade(10年間)の2倍というハイペースです。今後も中央銀行がドルへの依存を減らし、地政学リスクに対するヘッジとして金を積み増し続ける限り、実物資産としての金の需要は構造的に支えられることになります。短期的には価格変動があるとしても、中長期的には世界経済の分断が進む中で、金は「最後の拠り所」としての地位をより盤石なものにしていくと考えられます。