ロシア最大の私立大学は2500万ドルのエッセイミルと繋がっていた:ドローン開発と学術不正の闇

ロシア最大の私立大学は2500万ドルのエッセイミルと繋がっていた:ドローン開発と学術不正の闇

キャリアオンライン学習学術不正ロシア大学オリガルヒGoogle広告

Google広告を駆使し、約2500万ドルもの収益を上げてきた学術不正(エッセイミル)のグローバルネットワークが、ロシアの軍事産業と深く結びついていることが明らかになりました。このネットワークは、表向きは「チューターサービス」や「AIライティングサービス」を謳いながら、実際には学生に代わってレポートや論文を執筆し、提出させていました。驚くべきことに、この不正行為の背後には、ロシア最大の私立大学である「Synergy」の幹部との繋がりが浮上しており、同大学はロシアのウクライナ侵攻を支援するドローン開発にも関与していることが報じられています。

「Nerdify」が繋ぐ、不正と軍事支援の闇

Google検索で「オンライン試験対策」や「レポート作成」といったキーワードで検索すると、「Nerdify」や「Geekly Hub」といったウェブサイトが上位に表示されます。これらのサイトは、一見すると学術的なサポートを提供するサービスのように見えますが、実態は学生の課題を代行して作成する「エッセイミル」であることが、調査報道によって明らかにされました。Googleは「不正行為を可能にする広告」を禁止していますが、これらのサイトは巧妙な企業再編やフロント企業を使い、Google広告を継続的に利用してきました。その収益は、約2500万ドルに達すると推定されています。

巧妙な手口と企業構造

「Nerdify」ブランドのウェブサイトを運営するグループは、Google広告アカウントが停止されると、新たな法人を設立し、しばしば若い女性を代表者にして、同じキーワードで広告配信を再開するという手口を繰り返してきました。キプロス、マルタ、香港などに登記された多数の企業が、この複雑なネットワークを形成しています。調査によると、このネットワークの運営者の一人であるアレクセイ・ポカティロ氏は、以前からペーパーミル事業に関与しており、共同設立者であるフィリップ・ペルコン氏と共に、ソーシャルメディアを利用したロシア政府のプロパガンダツール開発にも関わっていました。

Synergy大学:学術機関か、それとも詐欺と軍事支援の拠点か

さらに調査を進めると、フィリップ・ペルコン氏が、ロシア最大の民間教育機関である「Synergy」の複数の英国子会社の役職に就いていた、あるいは就いていたことが判明しました。Synergy大学は、「クリミアは我々のものだ」「ロシア帝国 – 再装填」といった愛国的なスローガン入りのTシャツを販売し、ロシア大統領プーチン氏の肖像画を飾るキャンパスを持つなど、ロシアのナショナリズムと結びついた教育機関として知られています。しかし、オンラインレビューでは、アフリカ諸国などからの留学生が、高額な学費を支払ったにもかかわらず、ビザが却下された後、返金も連絡も受けられないという詐欺被害の報告が相次いでいます。それだけでなく、Synergy大学のウェブサイトには、ロシア軍のために戦闘ドローンを開発し、国際的な制裁を回避する支援を行うと明記されており、ウクライナ侵攻を直接的に支援している実態が浮き彫りになっています。

学術不正から軍事支援へ:現代の複雑な不正行為の構造

不正行為の巧妙化とAIの悪用

現代の学術不正は、単にレポートを代筆するだけでなく、AI技術を悪用する方向へと進化しています。ChatGPTのような生成AIが登場したことで、学生は容易に質の高い文章を作成できるようになりました。しかし、AIによる文章生成の「検知」が困難になる一方で、「AIでは書けない」という理由で、より高度な「人間による執筆代行」が求められるようになっています。今回の調査で明らかになった「Nerdify」のようなサービスは、まさにその変化に対応し、AI時代においても不正行為を継続、あるいは拡大させるための新たなビジネスモデルを確立していると言えます。

学術不正と国家支援の交差点

今回の調査で最も衝撃的なのは、学術不正ネットワークと、国家の軍事活動支援との直接的な繋がりが確認されたことです。Synergy大学がドローン開発に関与し、ロシアの戦争遂行を支援しているという事実は、単なる個人の不正行為の域を超え、国家レベルでの不正行為の助長や、それを利用した利益追求が行われている可能性を示唆しています。このような複合的な不正行為は、国際社会における法の執行や倫理的な規範の重要性を改めて浮き彫りにします。

国際社会への警鐘:見過ごせないリスク

この問題は、ロシア国内に留まらず、国際的な学生詐欺やマネーロンダリングといった、より広範な犯罪活動へと繋がっています。フィリップ・ペルコン氏が英国で設立した「Duck World」というゴム製のアヒル専門店が、これらの不正行為で得た資金の洗浄に使われている可能性も指摘されています。このような複雑に絡み合った不正ネットワークは、各国政府や国際機関にとって、見過ごすことのできないリスクとなっています。特に、AI技術の進化と地政学的な緊張が高まる現代において、学術不正、詐欺、そして国家支援による軍事活動が結びつくシナリオは、我々が直面する新たな脅威と言えるでしょう。

画像: AIによる生成