
石の彫刻か、それとも未来の建築か?マルク・レシュリエがフィレンツェに贈る、仮設建築の限界を超えるインスタレーション「Ancient / New Site」
フランス人建築家マルク・レシュリエは、フィレンツェのフォッツェッツァ・ダ・バッソ中央広場に、彼の「プレ・アーキテクチャー(pre-architecture)」の実践を具現化した記念碑的なインスタレーション「Ancient / New Site」を発表しました。このプロジェクトは、訪問者が中に入り、横切り、滞在することを意図した18のモノリス(一枚岩のような構造物)で構成されており、1,700平方メートルの広大な空間を占めています。これらの構造物は、レシュリエの作品の中心となっている素材、コンクリートキャンバスで覆われた足場フレームから作られています。元々は、斜面の安定化や道路脇の補強といったインフラ目的で開発されたコンクリートキャンバスは、セメントを含浸させた柔軟なテキスタイルです。配置後に湿らせると24時間以内に硬化し、荷重支持建築要素としても機能する鉱物表面を形成します。レシュリエは、この工業用素材を壁だけでなく、屋根のような囲いにも使用し、その意図された用途を超えて活用しています。
「プレ・アーキテクチャー」が問いかける、建築の新たな可能性
機能から解放された構造
レシュリエは、あらかじめ定められた用途を持たない建築を構築することで知られています。彼は、ゾーニング規制や従来のプログラムに応えるのではなく、オープンランドスケープ、彫刻公園、一時的な設置場所などで、「プレ・アーキテクチャー」と彼が説明する、機能、規制、タイポロジーの前に存在する構造物を開発しています。パフォーマンスアート、伝統的な形態、産業的抽象化からインスピレーションを得て、彼の作品は、用途ではなく、スケール、質量、存在感を通じてコミュニケーションする物理的な言語としての建築を提案しています。このアプローチは、彼が建築分野のますますの硬直化と見なすものへの批判として位置づけられ、固定されたシステムを、オープンで曖昧、そして体験主導型の構造に置き換えています。
古代へのオマージュと未来への挑戦
ピッティ・ウオモ(Pitti Uomo)で発表されたこの哲学は、高さ5メートル、幅3メートル、奥行き9メートルの18のモノリスのフィールドとして具体化されました。これらのボリュームは、ストーンヘンジのような古代の儀式的な場所の空間的論理を彷彿とさせ、レシュリエが「考古学的な幾何学」と説明するものを作り出しています。インスタレーションは、歴史的な形態の象徴的な重みから、囲い、行列、儀式的な動きの感覚を借りています。同時に、このプロジェクトは、その建設方法と素材の言語を通じて現代的な存在感を主張し、古代の参照と未来的な実行との間に意図的な緊張関係を築いています。
体験を促す「歩ける」インスタレーション
「Ancient / New Site」は、柔らかさと硬さ、一時的なものと永続的なもの、古風なものと未来的なものの出会いを舞台としています。モノリスは巨大で不動に見えますが、その建設はスピード、軽さ、そして可逆性に基づいています。この矛盾は解決されるのではなく前面に押し出され、プロジェクトの主要な空間的物語となっています。従来の彫刻とは異なり、この作品は横断されるサイトとして構想されています。訪問者は、地下空間にアクセスするためにインスタレーションに入ることが求められ、観客を参加者に変えます。身体はボリュームの間を移動し、光、スケール、囲いの変化に適応します。このインスタレーションは、遠くから観察されるのではなく、その物理性が避けられないものである至近距離で遭遇するように意図されています。
考察:プレ・アーキテクチャーが示す、建築の固定概念からの解放
「プレ・アーキテクチャー」が現代建築に投げかける問い
マルク・レシュリエの「Ancient / New Site」は、単なるインスタレーションを超え、現代建築が陥りがちな機能性やタイポロジーへの固執に対して、根本的な問いを投げかけています。彼の「プレ・アーキテクチャー」という概念は、建築が特定の用途に縛られるのではなく、それ自体が空間的な体験や身体的な対話を生み出す可能性を秘めていることを示唆しています。コンクリートキャンバスという工業素材を、本来の用途を超えて大胆に活用する手法は、建築における素材の可能性を再考させると同時に、持続可能性や建設プロセスの効率性といった現代的な課題へのアプローチとしても興味深いものがあります。
古代と未来の融合がもたらす、新たな空間体験の創造
ストーンヘンジのような古代遺跡を思わせるフォルムと、コンクリートキャンバスという先進的な素材・工法との融合は、時間と空間を超えたユニークな体験を生み出しています。訪問者が構造物の中に入り、その中で身体を動かすことを促されることで、建築は単なる鑑賞対象から、能動的に関わる「場」へと変容します。この「歩ける」インスタレーションは、建築が私たちの感覚や認知にどのように影響を与えるか、そして固定されたシステムから解放された建築が、いかに多様な解釈と体験を可能にするかを示しています。これは、都市空間における公共アートや一時的な建築のあり方、さらには、将来の建築がより柔軟で、多様なニーズや環境変化に対応できる可能性を示唆するものと言えるでしょう。