
米国テクノロジーが支える中国の監視網:ネパールで自由なチベット運動が沈黙させられる現実
ネパールは、中国企業が監視技術を供給する少なくとも150カ国の一つに過ぎない。ベトナムの監視カメラからパキスタンの検閲ファイアウォール、ケニアの都市監視システムまで、中国のテクノロジーは世界中に広がっている。これは、資金難に苦しむ政府に対し、コスト効率は高いもののプライバシーを侵害する形で、監視技術を提供し、アルゴリズムとデータを統制の力とすることで、中国が世界的な影響力を拡大する上で不可欠な一部となっている。皮肉なことに、中国が輸出する監視ツールは、その最大のライバルであるアメリカで開発された技術に基づいている。AP通信の調査によれば、中国企業はアメリカの設計を模倣、あるいは盗用しているのだ。
アメリカのテクノロジーと中国の監視国家
長年にわたり、シリコンバレーの企業は北京の要求に応じ、技術を提供することで市場へのアクセスを得てきた。ワシントンと北京の間には緊張関係があるものの、アメリカのテクノロジーと中国の監視システムとの連携は今日でも続いている。例えば、Amazon Web Services(AWS)は、HikvisionやDahuaといった中国の巨大ハイテク企業にクラウドサービスを提供し、海外進出を支援している。これらの企業は、アメリカ商務省のエンティティリストに掲載されており、国家安全保障や人権上の懸念から取引には厳しい制限がある。AWSは、倫理規定を遵守し、米国の法律に従っており、自社が監視インフラを提供しているわけではないと述べている。DahuaとHikvisionも同様に、製品の乱用を防ぐためにデューデリジェンスを実施していると主張し、Hikvisionは「同社が弾圧に関与している、あるいは共謀しているとのいかなる示唆も断固として拒否する」と述べている。
グローバルな監視網の拡大
中国のテクノロジー企業は、通信、監視、デジタルインフラの包括的なサービスを提供しており、販売先や使用方法に関する制限はほとんどない。政治学者のシーナ・グリーテンス氏は、中国は低い犯罪率を持つグローバルなセキュリティモデルとしての地位を確立し、世界と共有できるソリューションを提供していると指摘する。しかし、それは同時に、権威主義的な統治に不可欠なツールと技術を輸出していることを意味する。AP通信の調査は、数千件のネパール政府調達文書、企業のマーケティング資料、流出した政府・企業文書、そしてネパール人、アメリカ人、中国人のエンジニア、経営者、専門家、当局者など40人以上の関係者へのインタビューに基づいている。
ネパールにおけるチベット難民への影響
かつて毎年数千人のチベット人がネパールに逃れてきていたが、その数は現在ではごくわずかになっている。チベット亡命政府は、厳しい国境管理、ネパールと中国の緊密化する関係、「前例のない監視」がこの激減の理由であると指摘している。2021年のネパール政府の内部報告書によれば、中国はネパール国内、さらには二国間協定で建設が禁止されている国境緩衝地帯の一部にも監視システムを構築していることが明らかになった。中国外務省は、西側企業に技術供与を強要したり、ネパールと協力してチベット人を監視したりしたという疑惑を否定し、「 ulterior motives(下心)による捏造」だと主張した。
自由な運動の抑制
数千人のチベット人がネパールを離れることを選択する中、かつて活気に満ちていた「チベットを解放せよ」運動は、かつてない監視の網の中で静かに息絶えつつある。49歳の元活動家、ソナム・タシ氏は、抗議活動をやめてから数年が経つが、10歳の息子をこの監視網から脱出させようとしている。ネパールで生まれた息子には、難民でも市民でもないことを証明する書類がない。タシ氏によると、抗議活動を行う可能性のある人物は、チベット蜂起記念日である3月10日やダライ・ラマの誕生日である7月6日などの重要な日程の前に拘束されるという。2018年のネパール警察の雑誌には、抗議活動を行う可能性のある人物を事前に特定し、逮捕することを可能にする予測的警察活動を構築していることが確認された。
テクノロジーの起源と拡散
ネパール全土に設置されているカメラのほとんどは、Hikvision、Dahua、Univiewといった中国企業製であり、顔認識やAI追跡ソフトウェアがバンドルされていることが多い。Hikvisionのウェブサイトやマーケティング資料では、Amazon Web Services(AWS)に依存するクラウド製品であるHik-ConnectやHikCentral Connectに接続されたネパールでのカメラシステムが宣伝されている。Hikvisionはネパール警察や政府にカメラを販売しており、ネパールでの入札テンプレートでは、政府が調達するCCTVカメラはHik-Connectに対応する必要があるとされている。北京からの支援の見返りに、ネパールの政府高官は長年にわたり中国に繰り返し感謝の意を示し、ネパール領土内での「反中国活動」を容認しないことを約束している。
考察:グローバル・サウスにおける中国製監視技術の普及とその含意
テクノロジー移転の恩恵と代償
アメリカの企業は、中国の広大な市場への参入のため、当初から技術移転を余儀なくされてきた。多くの場合、合弁事業や研究拠点の設立が中国市場への参入条件とされ、数十、数百もの企業がこれに応じ、暗号化や法執行といった機密分野でも貴重なノウハウや専門知識を移転した。中国企業は、人材の引き抜き、研究成果の獲得、そして時にはハードウェアやソフトウェアの単純なコピーによって、アメリカのハイテク企業を徐々に追い上げていった。アメリカ政府が公然と中国による経済スパイ行為や、アメリカ企業からの技術供与の強要を非難する中でも、技術の流出は続いた。
「監視国家」の輸出という新たな現実
アメリカのテクノロジーは、中国が監視技術のグローバルリーダーとなる上で重要な役割を果たした。Uniview(中国のAI搭載CCTVカメラサプライヤー)は、カリフォルニアに拠点を置くHPの中国監視ビデオ事業から分離された企業であり、2016年にネパール初の「安全な都市」プロジェクトの第一段階にカメラを供給した。Hyteraは、リアルタイム通信を可能にするデジタル・トランキング技術を備えた無線機などのデータインフラをネパール警察に提供した。Hyteraは最近、米モトローラ社から技術を盗んだことを認める司法取引に応じた。HikvisionとDahua(中国の二大監視カメラサプライヤー)は、現在ネパールで多数のカメラを販売しており、インテルやNvidiaと提携してAI機能を強化している。これらの連携は2019年の米国制裁後に終了したが、AWSは依然として両社にクラウドサービスを提供しており、一部の議員からは「抜け穴」と見なされている。
今後の展望と課題
中国は、かつて技術後進国だったが、今や世界最大の監視技術輸出国の一つとなっている。アメリカのテクノロジー企業が中国にソフトウェアを販売することの危険性、すなわちそれが監視や悪用に使われる可能性について、十分な警戒がなされなかった。その結果、中国は、国境管理、国内の治安維持、さらには国外での反体制派の監視に至るまで、その影響力を拡大させている。ネパールのような国々では、中国製監視技術の導入が、表向きは治安維持やインフラ整備に貢献しているように見えるが、その実、人権や自由を抑圧する道具となっている。これは、グローバル・サウスにおけるテクノロジー依存と地政学的な力学が複雑に絡み合った、現代における新たな課題を提示していると言えるだろう。