
2億9000万年前の「恐竜の吐しゃ物」化石発見!ドイツで最古のレグラジタライトが語る古代の食卓
約2億9000万年前、現在のドイツにあたる地域で生息していた肉食恐竜が、満腹の後に消化しにくいものを吐き出したものが、奇跡的に化石として発見された。この「レグラジタライト」と呼ばれる化石は、これまで発見された中で最も古いものであり、陸上恐竜の食物連鎖についての貴重な情報源となる。
化石から読み解く恐竜の食生活
レグラジタライトとは何か?
一般的に、恐竜の骨の化石は過去の生物について多くを語るが、その食生活の全容を明らかにするには限界がある。糞の化石(コプロライト)も研究に役立つが、その多くは海洋環境でしか保存されないため、陸上恐竜の食物網を再構築することは難しい。今回発見された化石(MNG 17001)は、当初コプロライトと疑われたが、その形状や成分からレグラジタライト、すなわち「化石化した吐しゃ物」であることが判明した。コプロライトが一般的に円筒形や円錐形をしており、有機堆積物に骨が埋まっているのに対し、この化石には堆積物がなく、リンの含有量も低いという特徴があった。
古代の生存戦略
多くの肉食動物が、消化しにくい骨や毛髪などを吐き出すことでエネルギーを節約する行動は、現代でも見られる。しかし、今回発見されたレグラジタライトは、完全に陸上で生活していた古生代の捕食者としては初確認となる。この化石からは、複数の半消化状態の骨が3D再構築されており、当時の爬虫類の祖先である「Thuringothyris mahlendorffae」や、最古の二足歩行脊椎動物である「Eudibamus cursoris」の顎の骨や上腕骨などが含まれていた。さらに、草食恐竜の祖先であり、最大で3メートルに達した可能性のある「Diadectidae」科の動物の骨も発見されており、捕食者が何を食べていたのかが具体的に示されている。
犯人の推定
この吐しゃ物の主がどの「Diadectidae」科の恐竜であったかは特定されていないが、それらを捕食できるほどの大きさであったことは確かだ。この地域の地層からは、当時の捕食者として、巨大なトカゲのような姿をしていた「Tambacarnifex unguifalcatus」と、背中に特徴的な帆を持つ「Dimetrodon teutonis」の2種が有力視されている。
古代の食卓の謎を解き明かす「吐しゃ物」化石
古生代の生態系における「吐しゃ物」化石の意義
今回発見された最古のレグラジタライトは、単に珍しい発見であるだけでなく、古生代の陸上生態系における捕食者と被食者の関係を理解する上で極めて重要な手がかりとなる。化石化した吐しゃ物という、通常は研究対象になりにくいものが、当時の食物連鎖や恐竜の摂食行動、さらには生存戦略までをも詳細に物語っている点は、古生物学における新たな研究の可能性を示唆している。
生存競争と食料獲得戦略の普遍性
この発見は、強力な顎と消化器官を持つ恐竜が、栄養価の高い獲物を効率的に摂取するために、体にとって不要な部分を「吐き出す」という戦略を用いていたことを示している。これは、現代の動物界でも広く見られる生存戦略であり、数億年という時間を経ても、生物が生き残るために用いる基本的なメカニズムは大きく変わらないことを示唆している。この「不快」とも思える行動が、古代の頂点捕食者たちの生存確率を最大化するための、驚くほど合理的な手段であったと言えるだろう。