
オストミー装具を「見せる」ファッションへ:日本の職人技とパリコレで挑む、医療タブー打破への挑戦
国際的な舞台でタブーに挑戦
世界には約1300万人のオストメイト(ストーマ装具使用者)がいると推定されていますが、特に英語圏ではその存在がタブー視されがちです。日本では、ストーマ(病気や事故による人工肛門や尿路)の装具について、よりオープンな環境が作られつつあります。「オストメト」という言葉や、ストーマ装具のピクトグラムが描かれたトイレ表示などが見られます。しかし、依然として多くの人が、この医療器具を隠すべきものと考えています。
日本の職人技が光るデザイン
JWMFは、医療器具を単なる負担ではなく、新たなライフスタイルの一部として捉え、アートやファッションの要素を取り入れることで、その認識を変えようとしています。今回の「ストーマ ネオ・アート・プロジェクト」では、京都の伝統的な着物製造技術を持つ木村染織、富喜織物、三宅縫製といった職人たちの協力を得て、革新的でスタイリッシュなストーマ装具のデザインを生み出します。西陣織や京友禅染といった高度な技術を駆使し、これまでになかったような洗練されたデザインの装具が制作されます。
パリオペラ座でのファッションショー開催へ
このプロジェクトの集大成として、2026年後半にフランス・パリの「La Galerie Broubon」でファッションショーが開催される予定です。JWMF代表の平林圭氏は、2022年にもパリで車椅子モデルのみを起用したショーを開催しており、今回で2度目のパリでのショーとなります。平林氏は、社会福祉、医療、ファッションを融合させることに人生を捧げてきました。このプロジェクトには、消化器外科医の矢野礼太氏や、うんち分析ゲーム「ウンコレ」のクリエイターである米山祐介氏も協力しています。モデルの一人には、16歳で慢性腸間膜偽閉塞症(実際には閉塞がないにも関わらず、腸閉塞のような症状を引き起こす難病)を発症したエマ・オツジ・ピクルスさんが選ばれています。
ファッションショーが社会に投げかける新たな視点
このオストメイト装具のファッションショーは、一部の人々には嘲笑されるかもしれませんが、それはまさにJWMFが払拭しようとしている社会的な偏見に他なりません。タブーが取り払われれば、これは医療技術、ファッション、社会学、そして日本の職人技が見事に融合し、何百万人もの人々の生活の質を向上させるための取り組みとして正しく認識されるようになるでしょう。この動きは、医療器具に対する社会全体の意識改革を促す可能性を秘めています。
医療とファッションの融合がもたらすインクルーシブな社会
JWMFの活動は、医療器具を「恥ずかしいもの」から「自己表現の一部」へと昇華させる可能性を示唆しています。特に、伝統的な日本の職人技と現代的なデザインを組み合わせることで、単なる機能的な器具に留まらない、文化的な価値を持つアイテムへと生まれ変わらせることができます。これは、オストメイトだけでなく、様々な医療器具を必要とする人々にとって、自己肯定感を高め、社会との繋がりを感じるための新たな道を開くものです。
今後の展望:インクルーシブデザインの重要性
今回のファッションショーは、医療分野におけるインクルーシブデザインの重要性を浮き彫りにします。デザインの力で、これまで社会的に周縁化されがちだった人々のニーズに応え、彼らがより快適に、そして誇りを持って生活できる環境を整えることができます。パリでのショーは、その一歩として、日本発の先進的な取り組みが世界に発信される貴重な機会となるでしょう。将来的には、このようなデザイン思考が、他の医療器具や福祉用具にも応用され、より多くの人々のQOL向上に貢献することが期待されます。