
疑惑の「詐欺スキーム」:ニューメキシコ州、テキサス石油会社を提訴 - 放置された油井の清掃費用は誰が負担するのか?
ニューメキシコ州は、テキサス州の石油・ガス会社3社とその幹部に対し、利益を上げながらも老朽化した油井の閉鎖・原状回復費用を州に転嫁したとして、「詐欺的スキーム」に関与した疑いで訴訟を起こしました。この訴訟は、企業が環境責任を放棄し、そのコストを納税者に押し付けるという、全米で増加している問題に光を当てています。
ニューメキシコ州、石油・ガス幹部を提訴
「詐欺的スキーム」の告発内容
ニューメキシコ州司法長官室が提出した72ページに及ぶ訴状によると、テキサス州在住のエベレット・ウィラード・グレイ2世、ロバート・ステッツェル、マーキス・リード・ギルモア・ジュニアの3名は、自らが設立したペーパーカンパニー、LLC、パートナーシップを通じて、数百もの油井を繰り返し移転させたとされています。この手口は、収益を懐に入れつつ、原状回復の義務から逃れるためのものだと訴状は指摘しています。
「プレイブック」:責任放棄の常套手段
訴状で詳述されている戦術の一つは、破産手続きの悪用です。幹部らは、会社を破産申請させ、その過程の外で自身が所有・管理する別会社に収益性の高い油井を移転させていたとされています。この行為により、債権者や清掃義務から価値ある資産が守られる一方、州はこれらの放棄された油井の閉鎖・原状回復のために数百万ドルもの費用負担を強いられることになります。
環境リスクと公的負担
今回問題となっている油井の未閉鎖状態は、気候変動を加速させるメタンガスや発がん性物質の放出、さらには高塩分で放射性のある廃水の漏洩といった深刻な環境リスクを伴います。ProPublicaとCapital & Mainの調査によれば、ニューメキシコ州は数千にも及ぶ未閉鎖油井の閉鎖・原状回復のために、最大16億ドルの費用負担に直面する可能性があり、企業の責任回避が公的財政に与える甚大なリスクを浮き彫りにしています。
業界の「プレイブック」:構造的な問題
グレイ、ステッツェル、ギルモア両名の手法は、業界内で「プレイブック」として知られる、古い油井から利益を絞り取った後に破産するという、よく見られる手口の一部であると指摘されています。環境活動家や州当局は、これが短期的な利益追求のために長期的な環境管理を怠り、最終的にそのツケを公衆に回すという構造的な問題であることを示唆していると述べています。
責任追及と規制改革:将来への道筋
財務保証の強化:保証金制度の見直し
問題となっている「孤児油井」(所有者不明の油井)の増加に対応するため、ニューメキシコ州は保証金制度の見直しを積極的に進めています。州石油・ガス規制委員会は、特に稼働率の低い油井に対する保証金の増額を求める改正案を検討中です。これにより、企業が責任を放棄した場合でも、州が原状回復費用を賄うための十分な資金を確保することが期待されます。ただし、業界団体からは、規制強化が小規模事業者に与える影響への懸念も表明されています。
業界の責任と今後の慣行
今回の訴訟と規制改革の動きは、ニューメキシコ州だけでなく、より広範な石油・ガス業界にとって、重大な転換点となる可能性を示唆しています。この問題は、より厳格な監督と、企業による説明責任の強化が急務であることを強調しています。エネルギー業界の変革が進む中で、企業の事業活動の全ライフサイクル、特に環境修復に対する責任を確実に履行させることは、公的資源と環境の健全性を守る上で不可欠です。ニューメキシコ州の対応は、利益追求が責任ある環境管理と両立されなければならないという、厳しい現実を突きつけています。