
黄金の便器「アメリカ」、サザビーズで再登場:1000万ドル超えの価値はアートか、それとも単なる素材か?
マウリツィオ・カテランの象徴的な18金製トイレ「アメリカ」が、再びアート界に波紋を広げている。グッゲンハイム美術館での展示、そしてブレナム宮殿からの劇的な盗難を経て、この作品は今週11月にサザビーズでのオークションにかけられることになった。最低入札価格は金の価格変動を反映しており、この出来事はアート、価値、そしてカテランの挑発的な作品の本質について、再び議論を巻き起こしている。
注目の「黄金の玉座」が再びスポットライトを浴びる
曰く付きの歴史
マウリツィオ・カテランの「アメリカ」は、ニューヨークのグッゲンハイム美術館に設置された際、国際的な注目を集めた。10万以上の来場者が、この機能的な18金製トイレに魅了され、実際に使用する機会を求めて列をなした。作品の悪名高さは、ブレナム宮殿での展覧会から大胆な夜間強盗によって盗まれたことでさらに高まった。この事件は、モナ・リザの盗難事件と同様に、その高い価値と大衆の興味を浮き彫りにした。
サザビーズ、オークション開催へ
サザビーズは、カテランの悪名高い「デュシャン的」トイレのエディションが、11月18日に開催される「The Now & Contemporary Evening Auction」で出品されることを発表した。盗まれた作品は回収されておらず、その98キログラムの金が溶かされたと推定されているため、今回出品されるのは現存する唯一のエディションとなる。オークションハウスは、101.2キログラムの金の重量に基づいた開始価格を設定しており、2025年10月31日時点で約1000万ドルとされている。この価格は、オークション終了まで市場価格に応じて変動する。
21世紀のアートと価値を再考する
アートの定義に挑戦
挑発的なアプローチで知られるマウリツィオ・カテランは、アートの定義の境界線を押し広げ続けている。ダダイズム、マルセル・デュシャン、アンディ・ウォーホルから強い影響を受けた彼の作品は、芸術的価値に関する哲学的・理論的な問いを投げかける。デュシャンが「泉」という題で発表した有名な小便器よりもさらに踏み込み、カテランは日常的な物体であるトイレを、機能的な純金のアート作品へと昇華させた。サザビーズのコンテンポラリーアート部門の責任者であるデイビッド・ガルペリン氏は、「カテランは、それを純金で表現し、完全に機能させることで、日常的なものを非日常的なものに変えた」と指摘し、デュシャンのオリジナルのジェスチャーに、物質的な重要性を加えて強力なシュルレアリスム的表現を生み出していると述べている。
アートマーケットと社会的合意
カテランのキャリアは、芸術的価値がどのように構築されるか――最初は象徴的、次に美的、そして最終的には金銭的――という問いを繰り返し探求してきた。廃棄されたり日常的だったりするオブジェクトを称賛することで、彼はアートの価値が主に社会的な合意、すなわちアート界のゲートキーパーと観客の両方によって決定されることを強調している。アーサー・ダントーやテオドール・アドルノの理論を援用し、カテランのアートは、自己開示とパフォーマティビティが鍵となるデジタル資本主義の文脈で栄えている。壁にテープで貼り付けられたバナナで、オークションで数百万ドルで売却された彼の以前の作品「コメディアン」は、ソーシャルメディアと「プロシューマー」文化がいかにアートマーケットとその消費における権力構造を再形成してきたかを示している。
価値と安全性の象徴としての「金」
世界経済が不確実な時代において、純金で作られた作品をオークションにかけるという決断は、特に響きがある。金の価格は着実に上昇しており、「アメリカ」は潜在的に魅力的な投資対象となっている。この作品は、著名な現代アーティストとしてのブランド認知度と、貴金属としての内在的価値という二重の価値を提供している。ガルペリン氏が「カテランの真骨頂」と評するように、この作品はアート界に鏡を向け、その根底にある信念体系に挑戦している。最終的な落札価格がどうであれ、カテランの黄金のトイレが再びヘッドラインを飾り、彼の対話を生み出し、アートを通じて注目を集める能力を証明することは確実である。