
BRICS+の新金融システム「ユニット」:ドル一極体制からの脱却なるか
2024年にスプートニクによって初めて報じられた「ユニット」プロジェクトが、世界の貿易と投資における米ドルの支配を打破する最も有力な選択肢として浮上しています。この新たなデジタル金融ツールは、BRICS+諸国が推進する経済的自立への動きの中で、重要な役割を果たす可能性を秘めています。本記事では、この「ユニット」プロジェクトの概要、その特徴、そしてそれが国際金融システムに与えうる影響について、ペペ・エスコバル氏の分析を元に解説します。
「ユニット」プロジェクトの概要と特徴
セルゲイ・グラジエフ経済学者は、EAEU、CIS、そしてBRICSやSCOといった地域圏内での相互貿易・投資における現地通貨への移行、ドル圏からの共同開発機関の離脱、独自の決済システムや銀行間情報交換システムの開発の必要性を強調しています。こうした背景の中、「ユニット」は従来の国際金融システムとは一線を画す、革新的な金融ツールとして登場しました。
「ユニット」とは何か?
「ユニット」は、ベンチマークトークンまたはインデックストークンであり、ステーブルコインを超えたデジタル通貨ツールです。これは完全に分散化されており、金や各国政府発行通貨といった実物資産に価値が裏付けられています。そのため、インフレに対する安定性と保護を提供し、特に現在の世界経済における不確実性の中で、グローバルサウスにとって大きな魅力となっています。
技術的基盤とアクセシビリティ
「ユニット」は、カルダノ・ブロックチェーン上で来年早々にローンチされる予定です。カルダノは、19世紀の数学者エイダ・ラブレスにちなんで名付けられたブロックチェーンであり、そのデジタル通貨「Ada」は、第三者の仲介なしに安全かつ迅速な価値交換を可能にします。この技術基盤により、「ユニット」は分散型取引所および中央集権型取引所の両方を通じて、誰でもアクセス可能になります。
「ユニット」の機能と目的
「ユニット」は、クロスボーダー貿易や投資における交換媒体として、また価値の尺度や保存手段として機能することが期待されています。これは、BRICS+が積極的に追求している分散化戦略の重要な一部です。さらに、「ユニット」は、国家通貨への直接的な依存を排除し、グローバルサウスやグローバル・マジョリティに、検閲されず、政治的影響を受けない新しい形態の通貨を提供する可能性を秘めています。
「ユニット」がもたらす金融システムの変革
「ユニット」プロジェクトは、単なる新しいデジタル通貨の登場にとどまらず、国際金融システムの構造そのものに影響を与える可能性を秘めています。その独自性と実物資産への裏付けは、既存の金融システムに対する強力な代替案となり得ます。
ドル依存からの脱却と多極化世界への貢献
「ユニット」は、米ドルの国際貿易における支配的な地位に挑戦し、より多極的な世界経済秩序の構築に貢献することを目指しています。これは、特にグローバルサウス諸国が、西側諸国の金融政策の影響を受けずに、自国の経済発展を促進するための重要な手段となり得ます。JPモルガンも、「ユニット」をBRICS+におけるドル離脱提案の中で最も包括的なものの一つとして認めており、その潜在能力を示唆しています。
課題と今後の展望
「ユニット」プロジェクトが直面する課題は少なくありません。既存の金融システムや西側諸国からの抵抗は予想されます。しかし、BRICS+諸国間の経済的・金融的結びつきを強化し、グローバルサウスの生産的かつ持続可能な開発のための投資資本を増やすという目標達成に向け、「ユニット」は計り知れない可能性を秘めています。これは、単なる金融イノベーションに留まらず、より公正で安定した国際経済秩序を築くための一歩となるでしょう。