
脳疾患を5年早く見抜く?眼球の動きで「パーキンソン病」を予測する最新テックの衝撃
脳神経疾患の早期発見は、現代医療における極めて重要な課題です。特にパーキンソン病やアルツハイマー病は、臨床症状が現れる頃にはすでに神経細胞の多くが失われていることが多く、いかに「発症前」に兆候を捉えるかが鍵となります。このたび、フランスとベルギーを拠点とするスタートアップ「neuroClues」がシリーズAで1,000万ユーロの資金調達を実施しました。彼らが開発した眼球運動追跡技術は、従来の診断のあり方を根本から変える可能性を秘めています。
眼球運動をAIで解析する「神経疾患の早期検知」技術
高精細な眼球追跡でバイオマーカーを抽出
neuroCluesのデバイスは、ポータブルなヘッドセット型で、装着して画面上のターゲットを追うだけで片目あたり毎秒最大800枚の赤外線画像を撮影します。この膨大なデータから、AIモデルが神経変性疾患に関連する眼球運動のバイオマーカーを抽出・解析します。パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症といった疾患の兆候を、客観的かつ定量的なデータとして提供できるのが特徴です。
従来の「指を追う」診察の限界を打破
これまで多くの医師が臨床の現場で行ってきた「指を追う」ような視診は、主観に依存するため誤差が生じやすく、パーキンソン病では4人に1人が誤診を受けると言われています。診断確定までに平均13ヶ月を要する現状では、その間に治療のチャンスを逃してしまうリスクがあります。neuroCluesの技術は、こうした定性的な判断の限界を、AIによる客観的な数値測定で解消しようとしています。
国際市場への展開と次なるマイルストーン
同社は2025年1月に欧州での医療機器認定(CE認証)を取得し、既に臨床現場への導入が進んでいます。今回調達した1,000万ユーロの資金は、商業チームのさらなる拡大と、2026年に予定している米国FDA(米国食品医薬品局)の承認取得に向けた取り組みに充てられる見込みです。グローバルな医療インフラとしての地位確立を目指しています。
脳疾患医療の転換点:早期診断から早期介入へ
予備研究が示す「5年前」の発見という可能性
neuroCluesの真の価値は、画像診断でも捉えられない初期段階を検知できる可能性にあります。予備研究では、臨床診断の5年前からパーキンソン病の兆候を特定できたというデータが示されており、この「数年」という猶予期間は、将来的な治療法や生活習慣の介入において劇的な効果をもたらす可能性があります。早期診断は単なる発見ではなく、神経変性の進行を遅らせるための時間的アドバンテージを得ることを意味します。
検査の「ルーチン化」がもたらす医療インフラの進化
眼球運動と神経疾患の関連性は1905年から研究されてきましたが、これまではハードウェアのコストや精度の問題から普及が阻まれてきました。簡便なヘッドセット型デバイスが実用化されたことで、今後は血液検査のように、脳疾患の検査が定期検診の一部として組み込まれる可能性があります。高齢化社会において神経疾患を「予見可能なもの」に変えることは、人々の健康寿命を延ばすための医療インフラの劇的な進化と言えるでしょう。