
「大学はもう不要?」35%が価値低下を実感、高騰する学費と「役に立たない学位」の時代
Gallupの調査によると、アメリカ国民の間で大学教育を「非常に重要」と見なす割合が35%まで低下しました。これは、40%が「かなり重要」、24%が「あまり重要でない」と回答している状況と比較しても、顕著な変化と言えます。
重要視する声の減少傾向
2019年の調査では半数以上が大学を「非常に重要」と回答していましたが、2013年には70%、2010年には75%に達していたことを考えると、その低下傾向は明らかです。一方で、「あまり重要でない」と回答する割合は2019年以降倍増しており、大学教育への懐疑的な見方が広がっていることが伺えます。
支持層による認識の違い
特に注目すべきは、民主党支持者においても「非常に重要」と考える割合が減少している点です。しかし、民主党支持者の多くは「あまり重要でない」ではなく「かなり重要」と回答しているのに対し、共和党支持者においては「かなり重要」と「あまり重要でない」が同程度(各39%)であり、大学教育を「あまり重要でない」とする割合は「非常に重要」とする割合の約2倍に達しています。また、大学卒業者自身でさえ、「非常に重要」と考えるのは4割にとどまり、卒業しない層では「あまり重要でない」と「非常に重要」がほぼ同数となっています。
大学教育への信頼低下の背景
大学教育への信頼低下は、特に共和党支持者において顕著であり、その理由として左派的な政治的アジェンダが大学に蔓延しているとの批判が挙げられています。さらに、回答者の38%が「政治的理由」、32%が「大学で適切なことが学べない」ことを信頼低下の理由として挙げています。
変化する大学教育への期待:その背景と今後の展望
大学教育の重要性に対する認識の変化は、単一の要因ではなく、複合的な背景によって引き起こされていると考えられます。この流れは、高等教育のあり方だけでなく、個人のキャリア形成や社会全体の知的資本にも大きな影響を与える可能性があります。
教育費の高騰と価値の乖離
近年の高等教育における学費の高騰は、多くの人々にとって大きな負担となっています。1971年には大学の学費が現在の水準と比較して破格に安かった時代とは異なり、卒業までに多額の負債を抱えるケースが少なくありません。この負債は、卒業後の収入に見合わず、住宅購入などのライフイベントを困難にする一因となっています。学費がインフレ率をはるかに超えて上昇しているにもかかわらず、それに見合うだけの収入を得られる保証がないという現実は、大学教育の費用対効果に対する疑問を投げかけています。
多様化する学習機会とキャリアパス
近年、職業訓練校(トレードスクール)のメリットが注目されたり、オンライン学習やマイクロクレデンシャル(少量の学習成果)といった多様な学習形態が成長したりしています。これらは、従来の4年制大学に代わる、あるいは補完する形で、特定のスキル習得やキャリア形成に直結する選択肢を提供しています。特にAIの進化などによる労働市場の変化を考えると、大学での広範な知識習得よりも、より実践的で変化に対応できるスキルの重要性が増していると言えるでしょう。
「役に立たない学位」への疑問
文学、心理学、芸術、宗教など、直接的な職業スキルに結びつきにくいとされる学位の価値について、疑問の声が上がっています。これらの分野で得られる知識や教養は、個人の視野を広げ、人間性を豊かにする側面がある一方で、卒業後の就職や収入に直結しない場合、多額の学費と時間を費やしたことへの投資対効果を問われかねません。教育機関は、こうした社会のニーズや現実を踏まえ、学位の価値を再定義していく必要に迫られています。