コロナ禍で大学生の体力はどう変わった?4年間の追跡調査で判明した驚きの結果

コロナ禍で大学生の体力はどう変わった?4年間の追跡調査で判明した驚きの結果

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COVID-19パンデミックは、世界中の人々の健康に多大な影響を与えましたが、特に若者の健康指標である身体的フィットネスは大きな打撃を受けました。大学生活は、長期的なライフスタイルを確立する重要な時期ですが、パンデミックによる行動制限は、この時期の学生たちのフィットネスにどのような変化をもたらしたのでしょうか。本記事では、2019年から2022年までの4年間、大学生の身体組成、フィットネス、肥満の傾向を追跡調査した研究結果をもとに、パンデミックが彼らの体力に与えた長期的な影響と、その性差について詳しく解説します。

研究から明らかになった学生たちの体力変化

この研究では、4,413人の中国人大学生(男性27%、女性73%)を対象に、2019年から2022年までの4年間、毎年身体測定と体力テストを実施しました。その結果、パンデミックが大学生の身体的フィットネスに顕著な変化をもたらしたことが明らかになりました。

体重と肥満率の増加

調査期間中、参加者の体重と肥満率は全体的に増加傾向を示しました。特に男性では、肥満率が2019年の6.97%から2022年には11.6%へと大幅に増加しました。女性の肥満率も1.9%から3.45%へと上昇しました。また、過体重の割合もわずかに増加しました。この体重増加と肥満率の上昇は、パンデミックによる活動量の低下や食生活の変化が影響していると考えられます。

心肺機能の低下

肺活量については、2021年にピークを迎えましたが、2022年には男性で4,114.16 mLから3,934.31 mLへ、女性では3,314.69 mLから2,957.8 mLへと急激に低下しました。持久走の成績(1,000m走および800m走)も、2020年以降悪化する傾向が見られました。これは、パンデミックによる運動機会の減少が、学生たちの心肺持久力に影響を与えたことを示唆しています。

筋力と柔軟性の変化:男女差が顕著に

長座体前屈や50m走のパフォーマンスにも変化が見られました。長座体前屈の成績は男女ともに低下傾向を示し、柔軟性の低下が確認されました。50m走では、女性の成績は2022年に顕著な改善を見せましたが、男性の成績には大きな変化はありませんでした。一方、男性の懸垂(プルアップ)の成績も安定していました。これらの結果から、筋力に関しては、特に女性において、パンデミックの影響が比較的軽微であった可能性が示唆されます。しかし、柔軟性の低下は男女ともに共通して見られ、長時間の座学や活動制限が影響していると考えられます。

女性の特定能力における改善

特筆すべきは、女性においては50m走のタイムが向上し、腹筋運動(1分間腹筋)の回数も増加した点です。これは、パンデミック期間中に自宅でのトレーニングや、大学が提供するオンラインフィットネスプログラムなどが、一部の学生、特に女性の筋力向上に寄与した可能性を示唆しています。

考察:パンデミックがもたらした体力低下と今後の課題

パンデミックによる体力低下の構造的要因

本研究の結果は、COVID-19パンデミックが大学生の身体的フィットネスに深刻かつ長期的な影響を与えたことを明確に示しています。特に、肥満率の増加と心肺持久力の低下は、将来的な健康リスクを高める懸念があります。大学生活という、成人への移行期にある若者たちが、パンデミックによって健康的な生活習慣を確立する機会を奪われたことは、公衆衛生上の重要な課題と言えます。男性における肥満率の増加が女性よりも顕著であった点は、性別による影響の違いを考慮した介入策の必要性を示唆しています。

教育機関が果たすべき役割

この調査結果は、大学が学生の健康維持・増進のために、より積極的な役割を果たすべきであることを示唆しています。具体的には、BMI管理の徹底、肥満予防策の強化、そして個々の体力レベルや特性に合わせた、アジリティ(敏捷性)、筋力、持久力向上を目的としたターゲットを絞ったフィットネスプログラムの提供が不可欠です。特に、オンライン授業の普及により、学生の運動不足が深刻化する可能性があるため、大学は、対面授業だけでなく、オンライン環境でも効果的に運動を継続できるような支援策を講じる必要があります。

長期的な健康への影響と今後の展望

パンデミックによる身体活動量の低下が、長期的にどのような健康問題を引き起こすのか、さらなる追跡調査が必要です。柔軟性の低下は、怪我のリスクを高めるだけでなく、日常生活の質にも影響を与える可能性があります。大学は、学生が健康的なライフスタイルを維持できるよう、身体的側面だけでなく、精神的なサポートも包括的に提供していくことが求められます。また、今回の調査結果は、将来的なパンデミックや同様の危機発生時に、教育機関や公衆衛生当局が迅速かつ効果的な対策を講じるための貴重な科学的根拠となるでしょう。

画像: AIによる生成