鳥インフルエンザH5N5、米国で初のヒト死者発生 - 感染リスクと監視体制の重要性

米国ワシントン州グレイズハーバー郡に住む高齢の住民が、鳥インフルエンザH5N5ウイルスに感染し、11月21日に死亡しました。この患者は基礎疾患があり、重度のインフルエンザ様症状と呼吸器系の不調を呈していました。自宅で飼育していた鶏が野鳥に接触していたことから、野鳥から家禽、そしてヒトへと感染が拡大した可能性が指摘されています。この事例は、H5N5型鳥インフルエンザウイルスによるヒトの死亡例としては世界で初めてとなります。

H5N5鳥インフルエンザウイルスの概要とH5N1との違い

H5N5は、鳥類の間で流行する高病原性鳥インフルエンザウイルスの一種です。広く知られているH5N1型と同様に、鳥類に重篤な症状を引き起こす可能性があります。インフルエンザAウイルスは、表面のタンパク質「ヘマグルチニン（HA）」と「ノイラミニダーゼ（NA）」の違いによってサブタイプが分類されます。H5N5とH5N1は、どちらもH5型のHAタンパク質を持っていますが、NAタンパク質の種類が異なります。遺伝子解析の結果、今回確認されたH5N5ウイルスは、世界的に流通している主流のH5N1株とは異なることが判明しています。

今後の感染リスクと継続的な監視の重要性

世界保健機関（WHO）は、鳥インフルエンザのヒトへの感染リスクは依然として低いとしながらも、継続的な監視の重要性を強調しています。インフルエンザウイルスは宿主を種を超えて変異し、パンデミックを引き起こす可能性を秘めていますが、鳥インフルエンザがヒトに感染する「スピルオーバー」のほとんどは一度きりの感染で終わります。しかし、今回の事例のように重篤化するケースも存在するため、科学者たちはウイルスがヒトに感染し、さらにヒトからヒトへと感染を広げる兆候がないか注意深く監視しています。現時点では、H5N5がヒトに広範なリスクをもたらす可能性は低いと考えられていますが、ウイルスが変異し、新たな感染機会をうかがう可能性は常に存在します。そのため、H5N5を含む様々な鳥インフルエンザウイルスの動向を注意深く監視し続けることが、公衆衛生上の極めて重要な課題となります。