
8億人の女性が取り残される「デジタル格差」の現実と、1.3兆ドルの経済的ポテンシャル
世界中でデジタル化が急速に進む一方で、低・中所得国(LMICs)における男女間の「モバイルインターネット格差」がいまだ深刻な課題となっています。最新の調査によると、8億1,000万人もの女性がモバイルインターネットを利用できておらず、男性との間に無視できない隔たりが存在することが明らかになりました。この記事では、この格差の実態と、それが社会や経済にどのような影響を及ぼしているのかを紐解きます。
低・中所得国におけるモバイルインターネットの男女格差の実態
縮まらない格差と2億人のビハインド
GSMAが発表した『Mobile Gender Gap Report 2026』によれば、2025年にモバイルインターネットの利用における男女格差はわずかに縮小したものの、依然として女性は男性よりも12%利用率が低い状況です。これは、男性に比べて2億人も多くの女性がオンラインの世界から切り離されていることを意味し、総数で8億1,000万人の女性がデジタル社会の恩恵を享受できていません。
地域と居住地による深刻な偏り
取り残されている女性の3分の2以上が、サハラ以南のアフリカと南アジアに集中しています。これらの地域は特に男女格差が大きく、それぞれ26%、25%に達しています。さらに、都市部に比べて農村部での格差が2倍から3倍と広がる傾向にあり、地理的な障壁がデジタルへのアクセスをさらに困難にしています。
アクセスを阻む「3つの壁」
モバイルインターネット利用の最大の障壁となっているのは、「手頃な価格(コスト)」「リテラシー」「デジタルスキル」です。また、スマートフォンの所有率においても13%の男女格差があり、約2億1,000万人の女性が端末を所有できていない計算になります。社会規範や教育・所得の不平等といった構造的な問題が、こうした障壁をより強固なものにしています。
デジタルインクルージョンがもたらす未来の展望
経済的インパクトと社会のレジリエンス
このデジタル格差を解消することは、単なる公平性の追求にとどまりません。2023年から2030年の間に、LMICsにおけるモバイルインターネットの男女格差を解消すれば、1.3兆ドルものGDPの押し上げ効果が期待できると試算されています。インターネットへのアクセスは、経済的・気候的・政治的なショックに対して女性が強靭さを持つための重要な手段となるのです。
AI時代の新たな分断への警鐘
特筆すべきは、AIのような最先端技術が普及する一方で、基礎的なモバイル環境の格差が解消されないままでは、デジタル社会における不平等がさらに加速する恐れがあるという点です。GSMAの専門家が指摘するように、デジタル化の恩恵を誰にでも平等に行き渡らせることは、もはや単なる権利問題ではなく、持続可能な発展のための必須要件となっています。今後、より包括的な社会を実現するためには、インフラ整備だけでなく、教育とスキル向上を一体化させた多角的なアプローチが求められるでしょう。