フォード、EVから撤退しエネルギー貯蔵市場へ転換:巨額の損失と新たな収益源への期待

フォード、EVから撤退しエネルギー貯蔵市場へ転換:巨額の損失と新たな収益源への期待

環境問題再生可能エネルギーフォードEV電気自動車エネルギー貯蔵バッテリー

自動車大手フォードは、電気自動車(EV)事業への巨額投資から戦略的に撤退し、成長著しいエネルギー貯蔵(グリッドバッテリー)市場に注力する方針を明らかにしました。この方針転換に伴い、約200億ドルのEV関連投資の帳簿価値を削除するという、同社にとって過去最大級の減損処理を行うことになります。この決断は、EV市場の現状とエネルギー貯蔵市場の将来性に対する同社の見解を反映したものであり、自動車業界におけるエネルギーシフトの新たな局面を示唆しています。

EV事業からの撤退と工場再編

EVバッテリー工場での人員削減と生産計画の見直し

フォードは、EV事業への初期の野心を縮小し、EV関連投資における約200億ドルの帳簿価値を削除することを発表しました。この決断は、ケンタッキー州とテネシー州の巨大なバッテリー工場「BlueOval City」にも影響を与えています。ケンタッキー州のEVバッテリー工場では約1,600人の従業員が解雇され、テネシー州の工場では当初計画されていたよりも約1,000人少ない人員雇用となる見込みです。これは、EVの需要が期待を下回る状況や、連邦政府のEVインセンティブ政策の変更などが背景にあると考えられます。

エネルギー貯蔵市場への注力と生産能力の活用

一方で、フォードはエネルギー貯蔵市場への参入を積極的に進めています。ケンタッキー州のEVバッテリー工場を再編し、リチウム鉄リン酸(LFP)セルを生産し、それらを5メガワット時以上の容量を持つ20フィートコンテナにパッケージ化する計画です。2027年末までに年間20ギガワット時の供給を目指しており、これは「顧客主導のシフト」であるとフォードは説明しています。また、ミシガン州マーシャル工場では家庭用バッテリーユニット用のセルも生産する予定です。

SK Onとの合弁事業解消

フォードは、韓国のバッテリーメーカーであるSK Onとの合弁事業を解消することも発表しました。これにより、フォードはケンタッキー州のバッテリー工場を維持する一方、SK Onはテネシー州の広大なBlueOval City複合施設内の工場を取得します。この提携解消は、両社がそれぞれの戦略に沿って事業を進めるための合理的な判断と言えるでしょう。

考察:EV市場の停滞とエネルギー貯蔵市場のポテンシャル

EV市場の現状と成長鈍化の要因

フォードのEV事業からの撤退とエネルギー貯蔵市場への注力は、現在の米国のEV市場の停滞とエネルギー貯蔵市場の急騰という対照的な状況を浮き彫りにしています。米国におけるEV販売台数は、世界的なEV普及率(25%)と比較して大幅に低い約10%にとどまっており、成長率も鈍化しています。これは、手頃な価格のEVモデルの不足や、連邦EV税額控除の終了、ガソリン価格の低下、そして電力料金の上昇といった要因が複合的に影響していると考えられます。

エネルギー貯蔵市場の急成長とその背景

対照的に、エネルギー貯蔵市場は驚異的な成長を遂げています。テスラのエネルギー部門の収益は前年比67%増を記録し、100億ドルを初めて突破しました。これは、AIデータセンターからの需要増加、再生可能エネルギーの普及に伴う電力系統の安定化、そして中国製部品への依存を減らすための国内生産へのシフトといった要因が後押ししています。特に、2026年以降、米国内でのバッテリー生産能力の増強が求められる中で、フォードが国内市場での需要を取り込めるかが注目されます。

フォードの新たな挑戦における課題と展望

フォードがエネルギー貯蔵市場で成功を収めるには、いくつかの課題が存在します。まず、同社はピックアップトラックなどの信頼性で高い評価を得ていますが、エネルギー貯蔵製品においては実績がありません。既存のエネルギー貯蔵ソリューションプロバイダーは長年の経験を持ち、製品の性能向上や顧客との関係構築を進めています。フォードはテスラの戦略を模倣する形になりますが、EV事業での経験を活かせない状況での参入は、後発としてのハンディキャップを抱えることになります。しかし、国内生産へのシフトが加速する中で、フォードがこの新たな市場でどのように地位を確立していくのか、その動向が注目されます。

画像: AIによる生成