ギリシャ国民の6割が「安楽死」に賛成！疼痛緩和のための終末期医療に関する意識調査から見える希望と課題
ギリシャにおける安楽死への意識調査結果
6割が安楽死を支持
公開された調査によると、ギリシャ国民の60%が、耐え難い苦痛に苛まれる患者が自らの意思で人生の最終段階を選択する権利、いわゆる「最終的な出口（final exit）」を支持しています。この数字は、ギリシャ社会が終末期医療のあり方について、より寛容な姿勢を示し始めていることを物語っています。
疼痛緩和と尊厳の確保への願い
この支持の背景には、回復の見込みがない病状や、激しい身体的・精神的苦痛から解放されたいという切実な願いがあります。多くの人々は、単に死を早めることを望んでいるのではなく、尊厳を保ちながら、不必要な苦痛に長期間耐え続けることを避ける選択肢を求めていると考えられます。
科学界からの懸念と倫理的課題
一方で、医療専門家や倫理学者からは、安楽死の実施に伴う懸念や異議も表明されています。特に、生命の定義、患者の意思決定能力の評価、誤診のリスク、そして「滑りやすい坂（slippery slope）」論など、倫理的・社会的な側面からの慎重な議論が必要です。これらの懸念は、安楽死に関する法律やガイドラインを策定する上で重要な考慮事項となります。
国家生物倫理委員会の役割
このような社会的な動向を受け、国家生物倫理委員会は、国民の意識調査の結果を踏まえ、ギリシャにおける安楽死に関する議論を主導し、倫理的かつ法的な枠組みの検討を進めています。国民の意思と専門家の意見のバランスを取りながら、最善の道を探ることが求められています。
安楽死を巡るギリシャの議論から見る今後の展望
人間の尊厳と終末期医療の進化
ギリシャ国民の過半数が安楽死を支持するという事実は、現代社会における「人間の尊厳」に対する考え方の進化を示唆しています。単に生命を維持することだけが医療の目的ではなく、患者のQOL（Quality of Life）や尊厳を最優先に置くという価値観が浸透してきていると言えるでしょう。この流れは、ギリシャだけでなく、世界中の終末期医療のあり方にも影響を与える可能性があります。
「滑りやすい坂」論への向き合い方
安楽死導入の最大の懸念事項の一つである「滑りやすい坂」論、すなわち一度認めると、対象が拡大し、本来意図しない形で濫用される可能性があるという指摘は、極めて重要です。ギリシャの議論が成功するためには、厳格な基準設定と、患者の意思決定プロセスにおける透明性、そして精神的な支援体制の確立が不可欠です。単に「苦痛からの解放」という一面だけでなく、精神的なサポート体制の充実も同時に追求されるべき課題と言えます。
社会全体で考えるべき「より良い死」とは
本件は、ギリシャ社会が「より良い死」とは何かを真剣に問い直す契機となっています。テクノロジーの進歩により延命が可能になった現代において、人はどのように最期を迎えるべきなのか。それは、単に医学的な問題に留まらず、哲学、倫理、そして社会全体の価値観に関わる深遠なテーマです。ギリシャの経験は、各国が同様の課題に直面する際の貴重な示唆を与えてくれるでしょう。