
地球の未来を左右する炭素循環:コロンビア大学が巨額資金で解明へ
地球温暖化の進行を理解し、効果的な対策を講じるためには、大気、海洋、陸域、そして生物圏の間で炭素がどのように移動するかという「地球炭素循環」の正確な把握が不可欠です。この度、シュミット・サイエンスからの総額4500万ドルという資金により、コロンビア大学を含む4つの学際的な研究チームが、この地球炭素循環の理解を深めるための大規模なプロジェクトを主導することになりました。このプロジェクトは、気候モデリングの精度向上を目指し、地球の持続可能な未来に向けた重要な一歩となります。
炭素循環研究の最前線:新たな知見と技術の融合
炭素循環の不確実性と気候モデリングへの影響
近年の気候予測技術は目覚ましい進歩を遂げ、エネルギー利用から防災、都市計画に至るまで、様々な意思決定に貢献しています。しかし、膨大で測定が困難なデータに依存するこれらのモデルには、依然として地域スケールおよび大陸スケールでの炭素移動に関する理解に大きな不確実性が残されています。この不確実性は、気候変動への対応策を立てる上で、正確な情報に基づいた政策決定を妨げる要因となります。Virtual Institute for the Carbon Cycle(VICC)は、この炭素循環の不確実性を低減し、より確かな気候政策と解決策を導き出すことを目的としています。
4つの研究チームによる革新的なアプローチ
今回、VICCの支援を受けて、国際的な大学研究者からなる4つのチームが、気候予測の精度を高め、地球の持続可能な未来を確保するために不可欠な高解像度データを収集します。これらのチームは、AIや機械学習を駆使して新たな観測手法やモデル開発に取り組みます。具体的には、アフリカ中部の熱帯林における炭素フラックスの先駆的研究、高度な土地利用モデリング、冬季の南極海におけるロボット観測、そして急速な永久凍土融解が地球の炭素に与える影響などが含まれます。これらの分野でのデータ収集が進むことで、より精度の高い炭素会計、自然災害への備えの向上、そして気候・エネルギー移行に向けた情報に基づいた選択が可能になります。
海洋における炭素吸収の解明:COCO2プロジェクトの挑戦
コロンビア大学アース・インスティテュートの地球・環境科学教授であるギャレン・マッキンリー氏らが共同で主導する「Constraining Ocean Carbon with Optimized Observing(COCO2)」プロジェクトは、南大洋における重要な海洋炭素データを収集するために、自律型無人水上車両(USV)を展開します。現在、世界の海洋の約2%でしか炭素データが収集されていない状況で、COCO2プロジェクトは、海洋循環と炭素循環のコンピューターシミュレーションに基づいた、的を絞ったデータ収集を行います。これにより、海洋の炭素循環における役割をより精緻かつ正確に評価することが可能になります。収集されたデータは、機械学習などのツールを用いて分析され、他の地域からのデータと比較されることで、地球温暖化を抑制する上で極めて重要な、人類活動によって排出された二酸化炭素を海洋が吸収する過程の定量化における既知のギャップを埋めることを目指します。また、このプロジェクトは、海と大気間のCO2交換に関するより正確な地球規模の推定値を作成するのに役立ちます。
海洋の気候調整機能の重要性:炭素循環研究の新たな地平
地球の気候を支える海洋の役割
「このプロジェクトは、海洋が炭素を吸収する規模とメカニズムにおける重要な不確実性に対処し、海洋が現在および将来の気候にどのように影響するかをより良く理解することを可能にします」とマッキンリー氏は述べています。「人為的なCO2の増加を抑制することで、海洋は気候変動を制限しています。そうすることで、海洋は地球上のすべての人々に対して、巨大な気候調整サービスを提供しているのです。」科学者たちの推定によると、海洋はすでに、地球炭素循環の自然なプロセスを通じて、産業時代の人為的な炭素排出量の3分の1以上を大気から除去しています。「毎年、海洋の炭素吸収源は、人類の排出量の約25%を大気から除去しています」とマッキンリー氏は付け加えています。「これは、人類が設計したあらゆる二酸化炭素除去プロジェクトを合わせた量の1 million times more carbon than all engineered carbon dioxide removal projects combined.」
国際協力と今後の展望:持続可能な未来への道筋
COCO2プロジェクトは、研究チームメンバーが遠隔から実験を実行し、意見を提供できるように、クラウドコンピューティングも活用します。さらに、南アフリカの科学技術研究評議会(CSIR)やステレンボッシュ大学、そしてオーストラリアの国立科学機関であるCSIROもプロジェクトのパートナーとして参加しています。VICCは、2024年に気候政策の策定や解決策の実現に関連する時間スケールで、炭素循環科学における重要な知識のギャップを埋め、不確実性を低減するプロジェクトを公募しました。170件以上の応募があり、25チームが提案書の提出を招待され、最終的に4つのプロジェクトが資金提供のために選ばれました。VICCは来年、湿地排出量、土壌炭素フラックス、新しい計測機器、モデリングの革新などの追加的な優先事項を支援するための公募を再度発行する予定です。この国際的な協力と継続的な研究は、地球の気候変動対策において、ますますその重要性を増していくでしょう。