イランの映画監督セピデ・ファルシ、ガザで失われた命を悼むドキュメンタリー「Put Your Soul on Your Hand and Walk」を語る

イランの映画監督セピデ・ファルシ、ガザで失われた命を悼むドキュメンタリー「Put Your Soul on Your Hand and Walk」を語る

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イランの映画監督セピデ・ファルシは、カトマンズ国際映画祭で上映されたドキュメンタリー映画「Put Your Soul on Your Hand and Walk」について、そしてこの映画に登場する愛された故人の主題をどのように記憶するかについて語りました。この映画は、パレスチナの写真ジャーナリストであるファトマ・ハッソナとその家族がガザ地区でイスラエルの空爆により命を落とすという悲劇的な出来事を記録しています。当初は戦争下の生活を記録した作品でしたが、ファルシ監督のインタビューを通じて、ハッソナさんの不屈の精神と笑顔が永遠に記憶されるべき作品へと昇華しました。

戦争の現実と向き合う映画制作

インタビュー手法とテクノロジーの役割

ファルシ監督は、スマートフォンで別のスマートフォンを撮影するというユニークな手法を採用しました。この方法は、監督と被写体との間の脆弱で不安定な繋がりを浮き彫りにし、いつ会話が途切れるかわからないという緊迫感を醸し出しています。また、ローファイな映像は、高画質のカメラでは得られない、絵画のような質感と人間味を与え、鑑賞者にあたりの情景や監督自身の存在を垣間見せることで、画像に奥行きを与えています。

イメージ制作への認識の変化

この映画制作は、ファルシ監督自身のイメージ制作に対する哲学を根本から変える経験となりました。特に、ハッソナさんが標的となり殺害された後、監督は「この映像をどうするか」という問いに常に直面するようになりました。ハッソナさんが「カメラは武器だ」と語ったように、イメージが持つ力を痛感し、自身の作品制作における優先順位や向き合い方が変化したことを明かしています。

感情を羅針盤とした編集

80時間にも及ぶ膨大な会話記録から映画を編集するにあたり、ファルシ監督は感情を最も重要な判断基準としました。物語の構造を構築するため、ハッソナさんの感情が強く表れ、本質的な情報が伝わる瞬間を丹念に拾い集めました。ニュース映像の挿入や、ハッソナさん自身の写真作品の活用は、映画に時代背景を与え、彼女の芸術性とメッセージを際立たせるために慎重に配置されました。

ファルシ監督の考察:映像の力と記憶の継承

戦争の音響効果による「見えない恐怖」の表現

ファルシ監督は、映画に直接的な暴力描写を含めず、音響効果のみで戦争の存在を表現するという意図的な選択をしました。これにより、視聴者は残虐な映像に目を背けるのではなく、ハッソナさんの表情や言葉に集中せざるを得なくなります。彼女の顔に現れる変化、そして彼女の言葉は、静かながらも力強く、戦争の過酷さと人間の尊厳の対比を際立たせています。

「希望」という危険なものへの信頼

ハッソナさんが「希望は危険なものだ」と語った言葉について、ファルシ監督は、希望がなければ人は絶望し、生きることを諦めてしまうと指摘します。イランにおける第三世代、第四世代の自由のための闘いを例に挙げ、希望こそが困難な状況でも人々を支え、前進させる力となることを強調します。ハッソナさんの笑顔と不屈の精神は、まさに希望の象徴であったと語ります。

アーカイブとしての映画制作と記憶の永続性

ファルシ監督は、ハッソナさんやその家族との繋がりの脆弱性を認識し、最初から映像を記録することにアーカイブとしての意味合いを見出していました。接続が不安定で、いつ途切れるかわからない状況下で、一つ一つの会話や映像は二度と再現できない貴重なものとなりました。彼女の詩や写真作品を映画に組み込むことで、ハッソナさんの多層的な人間性とその芸術性を称え、彼女の存在を未来へと継承しようとしています。

遺されたもの:パレスチナの尊厳、ハッソナの笑顔、そして希望

ファルシ監督は、この映画を通して、観客にパレスチナの尊厳、ファトマ・ハッソナの笑顔、そして人間性への希望を持ち帰ってほしいと願っています。ハッソナさんの顔、言葉、人柄は、声なき多くのパレスチナ人や物語の顔となり、彼女の生き様が普遍的な共感を呼び起こすことを期待しています。彼女の死が決して無駄でなく、その写真が世界を旅することを望んだ彼女の遺志を、観客が記憶に留めることを切望しています。

画像: AIによる生成