ギニアビサウで再びクーデター:麻薬取引と政情不安が絡む西アフリカの混乱

ギニアビサウで再びクーデター:麻薬取引と政情不安が絡む西アフリカの混乱

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ギニアビサウで再びクーデターが発生し、ウマロ・シソコ・エンバロ大統領が拘束されました。軍は「政情不安と選挙結果の操作を阻止するため」と発表しましたが、この混乱は西アフリカの不安定化をさらに深刻化させる可能性があります。本記事では、クーデターの背景、その重要性、そして今後の展開について詳しく解説します。

クーデターの背景と展開

ギニアビサウで起きたクーデターの概要

2025年11月26日(現地時間)、ギニアビサウで軍によるクーデターが発生し、エンバロ大統領が拘束されました。軍は、同国を不安定化させ、選挙結果を操作しようとする「進行中の計画」が発見されたと主張しています。クーデターを主導したのは、大統領警護隊の元隊長であるデニス・ニャーニャ准将とされています。軍はテレビ演説で、大統領を含む主要な政治指導者や選挙管理委員会の関係者を拘束したことを発表し、国内の全機関の活動停止を宣言しました。また、国境の封鎖、空・海・陸の交通網の停止、夜間外出禁止令の発令などの措置が取られました。

エンバロ大統領の正当性への疑問と政情不安

エンバロ大統領は、2019年の大統領選挙で当選しましたが、その正当性には当初から疑問が呈されていました。野党からは選挙結果の不正操作を指摘され、最高裁判所による承認も遅れるなど、政権基盤は不安定でした。さらに、2022年2月、2023年12月、そして今回のクーデター直前にも、クーデター未遂事件が発生しており、エンバロ政権は繰り返し不安定な状況に直面していました。批判者からは、エンバロ大統領が権力を維持するために意図的に危機を演出しているとの指摘もあります。

緊迫した大統領選挙と結果宣言

クーデター直前には、週末に行われた大統領選挙の結果発表を前に、現職のエンバロ大統領と野党候補のフェルナンド・ディアス氏がそれぞれ勝利を宣言し、国内は緊迫していました。軍は、選挙結果の操作を阻止するために行動したと主張していますが、野党側は、軍の介入はディアス氏の勝利を阻止するための「模擬クーデター」であると非難しています。国民の約7割が貧困層であるこの国では、長引く政治的行き詰まりが経済に悪影響を与えているとの懸念も高まっていました。

国際社会の反応と今後の懸念

アフリカ連合(AU)と西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)は、クーデターを非難し、選挙プロセスの再開を求めています。しかし、西アフリカ地域では、ギニアビサウ以外にもマリ、ブルキナファソ、ニジェールなどで軍事政権が台頭しており、ECOWASの影響力低下が指摘されています。国際社会は、ギニアビサウの軍事政権に対し、民主的な統治への早期復帰を求める圧力を強めると予想されますが、今後の政治的混乱は避けられない見通しです。

ギニアビサウのクーデターが示唆するもの:安定への渇望、不正への不信、そして麻薬取引の影

ギニアビサウにおけるクーデターの背景にある「安定」への渇望と「不正」への不信

ギニアビサウで繰り返されるクーデターは、国民が「安定」を強く求めている一方で、政治エリートに対する「不正」への根強い不信感があることを示唆しています。軍は、今回も「安定の維持」と「選挙結果の操作阻止」を名目に権力掌握を正当化していますが、過去の事例から、その真意は権力闘争や不正な利益の追求にある可能性も否定できません。特に、麻薬取引のハブとなっているという指摘もあり、軍部と犯罪組織の癒着が政情不安を助長している可能性も考慮すべきです。国民は、表面的な「安定」ではなく、真に公正で信頼できる統治を求めているのではないでしょうか。

西アフリカにおける民主主義の後退と地域秩序への影響

ギニアビサウのクーデターは、近年、西アフリカ地域で顕著になっている民主主義の後退という、より大きな文脈の中に位置づけられます。ECOWASがクーデターを非難しても、その影響力は低下しており、軍事政権間の連携(サヘル諸国同盟など)も進んでいます。これは、地域全体の民主主義の原則を揺るがし、不安定化を加速させる恐れがあります。国際社会、特にAUやECOWASは、過去の制裁措置などを踏まえつつも、より効果的な民主主義擁護策を打ち出す必要があります。さもなければ、西アフリカは、さらなる軍事的介入と混乱の時代に突入する危険性をはらんでいます。

薬物取引の温床となるギニアビサウ:クーデターがもたらす新たなリスク

ギニアビサウがラテンアメリカとヨーロッパを結ぶ麻薬取引の主要なハブとなっている現状は、今回のクーデターと無関係ではありません。軍部が選挙結果の操作を阻止する大義名分として「麻薬王」との連携を主張しましたが、これは逆に、軍部自身が麻薬組織の恩恵を受けている可能性を示唆しています。クーデターによる政治的空白と権力の移行期間は、麻薬組織にとって活動を拡大する絶好の機会となり得ます。軍事政権が、麻薬取引に目をつぶる、あるいは積極的に関与することで、国の安定はさらに損なわれ、国際的な非難を浴びることになるでしょう。この薬物問題への対応こそが、新たな暫定政権の真価を問う試金石となるはずです。

画像: AIによる生成