
ブラジルを襲う「毒入りリカー」パニック:127人中毒、対策急ぐ
ブラジル全土で、メチレンクロイド(メタノール)入りのリカーが原因とみられる中毒事件が多発し、国民的なパニックを引き起こしています。保健省によると、127件の疑いのある事例が報告されており、うち11件が確認され、116件が調査中です。この事態を受け、当局は解毒剤の供給や捜査を急いでいます。
中毒事件の概要と現状
発生状況と被害範囲
サンパウロの高級バーからリオデジャネイロのビーチまで、ブラジル各地で有毒リカーによる中毒事件が報告されています。これまでに少なくとも1人が死亡し、複数人が視力喪失や昏睡状態に陥っています。患者の多くは、カイピリーニャやウォッカトニックといった透明なカクテルを飲んだとされています。
当局の対応と対策
ブラジル保健省のアレシャンドレ・パジーリャ大臣は、無色の蒸留酒を避けるよう国民に警告し、メタノール中毒の解毒剤である「フォメピゾール」2,500回分と、医療用エタノール12,000回分を緊急購入したと発表しました。これらの解毒剤は、確認前でも患者に投与できるよう、5つの州と首都ブラジリアに供給が開始されています。
捜査の進展と懸念
連邦警察は、偽造リカーを流通させているとされる組織犯罪グループとの関連を捜査しています。メタノールは工業用化学物質であり、偽造または不適切に蒸留されたアルコールに含まれることがあります。この事件は、ブラジルが観光のピークシーズンを迎える中で発生しており、観光業やナイトライフ産業への経済的打撃も懸念されています。
毒入りリカー事件から見る、食の安全と消費者意識の重要性
見えにくいリスク:工業用化学物質の悪用
今回の事件は、メタノールのような本来は工業用に使用される化学物質が、いかに容易に食品や飲料に混入され、人々の生命を脅かすリスクとなりうるかを示しています。特に、見た目や風味に変化がなく、安価であることから密造酒に利用されやすいメタノールは、消費者がその危険性を認識しにくいという問題を抱えています。
規制と監視の強化、そして消費者のリテラシー向上へ
この事件は、アルコール飲料の製造・流通における規制と監視体制の重要性を改めて浮き彫りにしました。一方で、消費者が安価な酒類や出所の不明な飲料を購入する際に、より慎重になるべきであるという消費者リテラシーの向上も不可欠です。今後のブラジルでは、法規制の強化だけでなく、消費者が自ら身を守るための情報提供や啓発活動が求められるでしょう。