
米中間選挙:暗号資産PAC、巨額資金で政治に影響力拡大か
暗号資産(仮想通貨)業界の政治活動委員会(PAC)が、米中間選挙を前にして数百万ドル規模の資金を調達し、ワシントンで自らの政策を推進する候補者を支援する動きを見せている。この資金は、業界の規制緩和に向けたロビー活動や、将来の政策決定への影響力強化を目的としている。
暗号資産業界の巨額献金とその内訳
スーパーPACの資金力
暗号資産業界のスーパーPACは、2025年だけで約1億3300万ドルを調達し、総手元資金は1億9000万ドル以上に達した。特に、ベンチャーキャピタル企業のa16zが2400万ドル、CoinbaseとRippleがそれぞれ2500万ドルを寄付するなど、業界大手からの支援が目立つ。この巨額の資金流入は、選挙改革団体などから「影響力買い」として民主主義プロセスを損なうとの批判も受けている。
超党派戦略の模索
暗号資産業界の主要目標である包括的な法律「CLARITY法案」の行方が不透明となる中、業界は次期中間選挙に注目している。一部には共和党支持を強める動きもあるが、一方で特定の政党に依存することのリスクを指摘し、超党派での支持獲得を目指す声も上がっている。主要ロビー団体であるFairshakeは、2023年から2024年にかけて、共和党候補よりも民主党候補への支援に多くの資金を費やしており、柔軟な戦略を示唆している。
政治への関与の歴史と戦略の変化
初期の広告戦略からロビー活動へ
暗号資産業界は、2020年から2021年のブーム期に大規模な広告展開やロビー活動を活発化させた。CoinbaseやRippleといった企業は、政治への関与を深めるために支出を大幅に増やした。その後、2022年の中間選挙では、FTXの元CEO、Sam Bankman-Fried氏が1億ドル以上を政治献金に投じるなど、個人レベルでの政治献金も顕著になった。
PACを通じた影響力強化
2024年の選挙サイクルでは、Fairshake、Defend American Jobs、Protect ProgressといったPACが活動の中心となっている。特にFairshakeは、Coinbaseからの巨額の支援を受け、独立支出や関連委員会への移籍を通じて、その影響力を拡大させている。Issue Oneの調査ディレクター、Michael Beckel氏は、スーパーPACが特別利益団体の影響力拡大のための「流行」となっていると指摘している。
規制との攻防と民主主義への懸念
市場構造法案を巡る攻防
現在、暗号資産業界は市場構造法案の可決に向けて、議会と連携を進めている。しかし、Coinbaseが提供するステーブルコイン利回りサービスを禁止する条項などを巡り、銀行業界との間で意見の対立が生じている。ホワイトハウスは仲介を試みているが、現時点では合意に至っていない。Fairshakeが保有する巨額の資金は、法案通過に向けた業界の強い意欲を示している。
資金力による政策への影響
キャンペーン・リーガル・センターのGhosh氏は、暗号資産業界のような巨大な資金力を持つロビー団体が、一般市民の声を代弁するよりも、規制緩和という業界の利益を優先させることで、民主主義プロセスを損なうと警鐘を鳴らしている。Public Citizenのリック・クレイポール氏も、このような資金力が有権者の優先事項を議題から押しやり、民主主義制度への信頼を損なうと指摘している。選挙の健全性そのものが問われる中、暗号資産業界の政治的影響力拡大は、今後の米国の政治情勢にさらなる波紋を広げる可能性がある。