
アジアの銀行、プロテイン・トランジションへの準備は? AREが初のベンチマーク発表
Asia Research & Engagement (ARE) は、東南アジアおよびインドの銀行が、持続可能な食料・農業への融資をどのように進めているかを評価する「プロテイン・トランジション・バンク・ベンチマーク2025」を発表しました。これは、銀行が気候変動や自然保護の目標、国連の持続可能な開発目標(SDGs)、投資家の期待に沿った金融慣行を導入することの重要性を浮き彫りにしています。本レポートは、銀行が食料・農業セクターにおけるリスクと機会を理解し、責任ある融資能力を強化することを目的としています。
シンガポール:持続可能な融資の推進と透明性の向上
シンガポールの銀行は、すでに責任ある融資の枠組みを整備しており、DBS、UOB、OCBCは森林破壊を排除する原則を導入しています。今後は、森林破壊やケージフリー(動物福祉に配慮した飼育方法)の融資に関する透明性を高め、この分野における持続可能な融資をさらに促進することが求められます。
マレーシア:持続可能なパーム油生産の支援と動物福祉の強化
マレーシアのCIMB銀行とMaybankは、持続可能なパーム油生産を支援しています。これらの銀行は、飼料に関連する森林破壊の排除、および動物福祉の原則を融資基準に加えることで、畜産分野におけるリーダーシップを強化する機会があります。
タイ:植物由来タンパク質と未来の食分野におけるリーダーシップ
タイのKasikornbank、Krung Thai、SCBは、国内の植物由来食品および未来の食分野の拡大と早期に連携しており、「世界のキッチン」という目標を支援しています。代替タンパク質や人道的な生産方法におけるリーダーシップを発揮する絶好の機会です。
インドネシア・フィリピン:持続可能な農業金融への理解促進
インドネシアとフィリピンの銀行は、気候変動、自然、その他の農業リスクへのエクスポージャーが大きいため、BCA、Mandiri、BDO Unibankなどの銀行は、このセクターにおける持続可能性の枠組みの統合が初期段階にあります。より持続可能で回復力のある農業金融アプローチの必要性についての理解を深めることが重要です。
インド:気候リスク分析の着手と今後の課題
インドのICICI銀行は、セクターの気候リスクシナリオ分析を開示するなど、初期段階の取り組みを進めています。インドの銀行全体としては、森林破壊、動物福祉、抗生物質の使用を融資基準に含めるには至っていませんが、「重点融資セクター」として食料・農業が特定されていることから、栄養安全保障と気候変動への対応力を強化する融資枠組みの強化が明確に求められています。
プロテイン・トランジションの未来:アジアの銀行への提言
気候変動と食料・農業の相互関係の深化
食料・農業セクターは気候変動の主要な原因であると同時に、気候変動によって深刻な影響を受けるセクターでもあります。しかし、現在、食料・農業をネットゼロ戦略に組み込んでいる銀行はわずか2行にとどまっています。この分野における開示の進展はまだ初期段階であり、銀行は気候変動対策への貢献と適応策の両面で、より積極的な役割を果たす必要があります。
動物福祉と自然保護への意識向上と行動変容
現在、3行が融資枠組みにおいて動物福祉に言及していますが、これはこの分野における意識の始まりを示すものです。ケージフリー飼育や持続可能な金融の開発は、具体的な進歩へのロードマップとなり得ます。さらに、DBS、UOB、CIMBは昆明・モントリオール生物多様性枠組に整合し始めていますが、これを食料・農業融資に拡大し、森林破壊排除の検証を組み込むことが、自然と生物多様性の保護に向けた重要なステップとなります。
持続可能な金融による食料システムの変革促進
アジアの銀行は、植物由来タンパク質、森林破壊フリーの飼料、人道的なソリューション、自然に基づいたソリューションといった、移行資金調達の機会を活用すべきです。これにより、気候、健康、動物、自然保護に貢献する、より持続可能で回復力のある食料生産を推進することができます。AREは、銀行が早期に行動を起こすことで、システムリスクを軽減し、新たな価値を創出できると強調しています。