
化石燃料の増産計画は1.5℃目標を大幅超過:各国「無謀」な政策の裏側
内容紹介:「生産のギャップ」報告書が示す衝撃の事実
生産量は目標の2倍超に
ストックホルム環境研究所(SEI)、クライメート・アナリティクス、国際持続可能開発研究所が発表した報告書によると、主要20カ国の政府は2030年までに、地球温暖化を1.5℃に抑えるために必要な量の120%にあたる化石燃料を生産する計画です。これは、2023年の分析で示された110%という数字からさらに増加しており、対策が後退していることを示唆しています。
増加計画を進める主要国
米国、英国、オーストラリア、ロシア、カナダなど、世界の化石燃料生産の80%を占める20カ国が分析対象となりました。このうち、ノルウェー、英国、オーストラリアの3カ国のみが2030年までに石油・ガス生産を削減する計画を持っています。一方、米国、ドイツ、サウジアラビアを含む11カ国は、少なくとも1種類の化石燃料の生産を増やす計画です。
再生可能エネルギーへの投資は拡大
化石燃料への依存が続く一方で、再生可能エネルギーへの投資は急速に拡大しています。昨年は2兆ドルの投資が集まり、化石燃料への投資を8000億ドル上回りました。さらに、2024年には新規の発電容量の92%が再生可能エネルギーで占められており、価格、効率、排出量のいずれにおいても化石燃料を凌駕しています。
国際社会の「後退」への懸念
報告書の著者らは、多くの国が再生可能エネルギーへの移行という国際的なコミットメントに反し、依然として化石燃料に依存した計画を進めていることを懸念しています。このままでは、気候変動による破局的な影響や、経済的な混乱を招くリスクが高まると警告しています。
未来への警告:増産計画がもたらす気候変動の危機
「化石燃料依存」からの脱却の遅れ
報告書は、化石燃料産業が衰退期にあることを認識しながらも、多くの政府が生産を拡大しようとしている現状を「無謀」と批判しています。「化石燃料は最後の腿(もも)にある」という認識があるにもかかわらず、生産を続ける姿勢は、気候変動対策における国際社会の目標達成を困難にしています。
政治的思惑と気候変動対策の乖離
特に米国においては、トランプ政権による太陽光パネルや電気自動車への税額控除の廃止、洋上風力発電計画の中止などが、化石燃料への回帰を加速させていると指摘されています。このような政治的な判断が、気候変動対策の国際的な枠組みを揺るがしかねない状況です。
「今」行動を起こすことの重要性
専門家は、まだ手遅れではないと強調しています。米国が今後10年間で世界の石油・ガス増産の大部分を担うと予測される中、各国政府は化石燃料への傾倒を避け、再生可能エネルギーへの公正な移行を加速させるべきだと訴えています。コロンビアが化石燃料の段階的廃止に向けた国際会議の開催を発表したことは、気候リーダーシップに向けた前向きな一歩として期待されています。