IKEAも出資!自然界の「甲虫」がヒント?有害な食品添加物を置き換えるスイス発ベンチャーの挑戦

IKEAも出資!自然界の「甲虫」がヒント?有害な食品添加物を置き換えるスイス発ベンチャーの挑戦

環境問題再生可能素材スタートアップセルロース二酸化チタン持続可能性素材開発

食品から化粧品、塗料に至るまで、私たちの身の回りのあらゆる「白」を支えてきた成分、二酸化チタン(TiO₂)。しかし、近年その安全性への懸念から規制が強まり、代替物質の開発が急務となっています。この世界的な難題に、自然界の知恵を借りて挑むスイスのスタートアップ「Seprify」が、1,340万ユーロ(約22億円規模)の大型調達を実施しました。IKEAなどの大手企業も注目する、この革新的な技術の全貌に迫ります。

自然界に学ぶ次世代の「白」:Seprifyの技術と展開

昆虫の構造色に着想を得たセルロース技術

Seprifyが開発したのは、二酸化チタンに代わるセルロースベースの白色化ソリューションです。その着想源となったのは、東南アジアに生息する「Cyphochilus」という小さな甲虫です。この甲虫は、色素ではなく、その鱗の微細な構造によって光を効率的に散乱させ、自然界で最も白い表面を作り出しています。Seprifyはこの構造を応用し、地球上で最も豊富なバイオポリマーであるセルロースを精密に加工することで、二酸化チタンと同等の白色度や不透明感、さらにはUVカット機能を実現しました。

規制強化の逆風を追い風に変える

二酸化チタン(E171)は長年、食品や化粧品の着色料として多用されてきましたが、欧州食品安全機関(EFSA)が体内に蓄積するリスクを指摘したことを受け、EUでは2022年に食品への使用が禁止されました。多くのメーカーが代替品を探す中、炭酸カルシウムや米デンプンといった既存の代替品は、性能面や規制面で課題を抱えていました。Seprifyのセルロース技術は、物理的な構造で機能を果たすため、化学的な安全性が高く、既存の製造プロセスに適合しやすいという強みがあります。

幅広い産業への応用と実績

現在、同社は3つの製品ラインを展開しています。食品グレードの「SilvaAlba」、日焼け止め用の自然なSPFブースター「SilvaLuma」、そして塗料やインク用の「SilvaFolia」です。これらはFSC認証を受けた木材パルプから作られており、従来の二酸化チタンと比較してCO₂排出量を約80%削減できるとされています。すでにデンマークの企業Oterraとの商用提携をはじめ、100以上の組織が同技術の導入や評価を進めています。

バイオ素材革命から見る今後の展望

サーキュラーエコノミーへの不可欠な転換

本件が示唆するのは、産業界が「化学合成による機能追求」から「自然界の物理的構造の模倣」へと舵を切ろうとしているという重要な転換点です。これまで人類は、コストや効率を優先して化学物質に頼ってきましたが、健康被害や環境負荷という代償を支払うことになりました。Seprifyのような、天然素材を高度なエンジニアリングで加工するアプローチは、持続可能な素材への移行を促進し、循環型経済(サーキュラーエコノミー)を根底から支える鍵となるでしょう。

「機能性」と「安全性」の板挟みを超える

IKEAのような巨大企業が同社に出資している背景には、単なるトレンドではなく、供給網全体で持続可能な材料を確保したいという切実なニーズがあります。これまで「安全な代替品は性能が低い」というトレードオフが課題でしたが、Seprifyの事例は、生物模倣技術(バイオミミクリー)を用いることで、性能と安全性を両立できることを証明しつつあります。今後は、この技術が塗料や食品といった身近な製品にどれだけ迅速かつ安価に普及できるか、その製造のスケールアップが産業界全体への波及効果を決めることになるでしょう。

画像: AIによる生成