写真家マハタブ・フセインが挑む、90日間のロードトリップで描く「アメリカのイスラム」の真実

写真家マハタブ・フセインが挑む、90日間のロードトリップで描く「アメリカのイスラム」の真実

カルチャー写真アメリカイスラム教ロードトリップドキュメンタリー

写真家マハタブ・フセイン氏が、全米を90日間かけて旅し、現代のアメリカにおけるムスリムコミュニティの姿をドキュメントする大規模なプロジェクトを始動しました。9/11事件から20年以上の時を経て、アイデンティティを確立しつつある新世代のムスリムたちの姿を、ポートレートやインタビューを通して記録しようとするこの試みは、アメリカ社会における「所属」という概念を問い直す野心的な取り組みです。本記事では、このプロジェクトの全貌と、それが社会に投じるメッセージについて詳しく解説します。

ムスリム・アメリカを可視化するロードトリップ・プロジェクト

プロジェクトの背景と目的

2021年、9/11事件から20年という節目に開始された本プロジェクトは、アメリカ各地に住むムスリムのポートレート撮影を通して、彼らの多様な生活を記録することを目的としています。これまでに6都市で撮影が行われてきましたが、フセイン氏は今回、クラウドファンディングを通じて資金を集め、全米を横断する90日間の壮大な旅を計画しています。

記録される「アメリカのムスリム」の現在

フセイン氏が捉えるのは、かつて9/11後の空気の中で不可視化されることを余儀なくされた世代とは異なり、自身のスタイルやアイデンティティを「アメリカ流」に表現する新世代の姿です。彼は全米の様々な地域を訪れ、ポートレート写真、インタビュー、動画を通して、彼らがどのようにアメリカ社会に溶け込み、独自のコミュニティを築いているかを記録します。

クラウドファンディングを通じた共創

現在、Kickstarterキャンペーンが2026年5月18日まで実施されています。フセイン氏は、撮影対象者を単なる被写体ではなく「共同制作者」と位置づけており、この旅を通じて「Umma(イスラム共同体)」の概念を地理や背景を超えて可視化し、共有された経験として提示することを目指しています。

アートによる社会的ステレオタイプの打破と今後の展望

ステレオタイプを乗り越える「存在の可視化」

このプロジェクトが重要なのは、ムスリムを「社会の問題」としてではなく、アメリカの社会という巨大なタペストリーを構成する一要素として描き出そうとしている点にあります。メディアや政治の文脈で語られがちなムスリムの姿を、個人の日常的な喜び、信仰、ファッション、そして多様性を通して再定義することは、根深いステレオタイプを打破する強力な手段となり得ます。

「所属」の物語を紡ぐ写真の力

写真家が各地を巡り、個別の物語を丁寧に拾い上げる行為は、マイノリティに対する分断が進む現代社会において、橋渡しとしての役割を果たします。フセイン氏の作品が社会的に重要なのは、彼が単なるドキュメンタリー写真を撮っているのではなく、撮影者と被写体、そして観客が「共通の人間性」を再発見するための「つながりの招待状」を作成しているという点にあります。この視点は、今後の芸術表現が、社会的背景の異なる人々をいかに包括的に描けるかという課題に対する、一つの指針となるでしょう。

画像: AIによる生成