
オーガズム革命の終焉?OneTaste、疑惑と右派連携で奇妙な再起
かつて女性のオーガズムを革命的に変えると謳われたOneTaste。しかし、その創設者が有罪判決を受けた後、奇妙な転換を遂げ、右派メディアとの連携という予想外の展開を見せている。本記事では、OneTasteの興亡と、その現在地を深く掘り下げる。
OneTasteの軌跡:オーガズム・メディテーションから疑惑の渦へ
黎明期:オーガズム・メディテーションの誕生
OneTasteのルーツは、1968年に設立されたベイエリアのコミューン「Morehouse」で培われた「意図的なオーガズム」という実践にある。創設者のニコール・デイデオンは、このテクニックを自身で再構築し、2004年にOneTasteを設立。「オーガズム・メディテーション(OM)」と名付け、21世紀のウェルネス・トレンドに合わせたブランディングを行った。
隆盛期:急成長とメディアの注目
OMは、通常男性が女性のクリトリスを15分間、特定のスポットに沿って指で刺激するという瞑想的な実践であり、実践者は深い感覚体験やトラウマからの回復、世界との繋がりを深めると謳った。OneTasteは、この実践を中心に、グループレッスンやリトリートを提供し、一時的な急成長を遂げた。2015年には、全米で5,000社中537位にランクインし、2017年には1,200万ドルの収益を上げた。グウィネス・パルトロウやクロエ・カーダシアンといった著名人の支持も受け、ジェンダー平等運動とも結びつけられるなど、メディアの注目を集めた。
転落:疑惑とFBIの捜査
しかし、2018年のブルームバーグによる暴露記事を皮切りに、元メンバーから搾取や心理的・性的操作に関する告発が相次いだ。FBIの捜査を経て、2023年には創設者のデイデオンと元セールス責任者が、強制労働の共謀罪で起訴された。証言によれば、メンバーは感情的・性的な癒しを約束されて勧誘された後、望まない性行為や多額の借金を強要されていたという。
現在:右派メディアとの連携と再起
有罪判決後も、OneTasteは「Eros Platform by OneTaste」として活動を再開。オンラインコースの提供に加え、右派メディアと連携し、デイデオンを「宗教の自由への戦争」の犠牲者として描くプロパガンダを展開している。これは、かつての「カルト」というレッテルと、有罪判決を受けた創設者という事実から、潜在的な顧客層を限定させるリスクを孕んだ戦略と言える。
OneTasteの戦略転換:「カルト」からの脱却と右派支持の獲得
右派メディアとの連携の背景
OneTasteが右派メディアと連携する背景には、創設者とその元幹部の有罪判決に対する「国家による魔女狩り」という物語を構築し、ドナルド・トランプ前大統領からの恩赦を狙う動きがあると見られる。広告主導のコンテンツや、Roger Stone氏、Matt Gaetz氏といった右派の著名人との連携は、その一環と捉えられる。
「カルト」レッテルへの対応と組織の維持
「カルト」や「性的な搾取」といった批判に対し、OneTasteは、デイデオンが「芸術家」「ビジョナリー」であり、彼女の哲学こそが組織の根幹であると主張している。CEOのアニジ・アヤ―氏は、デイデオンの教えが自身の慢性疾患を治癒したと語り、彼女への強い忠誠心を示している。組織の存続と、OMという実践の普及のために、彼らは法的な戦いと情報戦を同時に行っている状況と言える。
今後の展望:支持者か、それとも孤立か
OneTasteの現在の戦略は、潜在的な顧客層を二分する可能性が高い。右派の思想や、陰謀論的な物語に共鳴する層には響くかもしれないが、一方で、多くの人々を遠ざける要因にもなり得る。ヨガやサイケデリック薬のように、かつては否定的に見られていたものが、やがて社会に受け入れられるという未来を信じているアヤ―氏の言葉は、OneTasteが今後もそのビジョンを追求し続けることを示唆している。しかし、有罪判決を受けた創設者と右派メディアとの繋がりは、この「ビジョン」の実現をより困難なものにするだろう。