Midjourneyで最も「盗用」されているアーティストは誰?意外な結果に迫る

Midjourneyで最も「盗用」されているアーティストは誰?意外な結果に迫る

カルチャーMidjourneyAIアート著作権侵害アーティスト不正利用

近年、AIアート生成ツールが急速に普及し、クリエイティブな分野に大きな変化をもたらしています。中でもMidjourneyは、そのリアルな画像生成能力で注目を集めていますが、一方で、アーティストの著作権や倫理的な問題も指摘されています。今回、Kapwingの調査により、Midjourneyで最も多くのプロンプトに使用されているアーティストが明らかになりました。それは、レオナルド・ダ・ヴィンチやレンブラントといった巨匠ではなく、アール・ヌーヴォーの画家、アルフォンス・ミュシャであることが判明しました。

AIアート生成におけるアーティストの利用実態

最も多く利用されたアーティストはアルフォンス・ミュシャ

Kapwingの調査によると、Midjourneyではアルフォンス・ミュシャが230,794回という圧倒的な回数で最も多くプロンプトに使用されました。これは、2位のレンブラント(128,143回)、3位のレオナルド・ダ・ヴィンチ(61,259回)を大きく引き離す結果です。あまり広く知られていないアーティストが、歴史的な巨匠を抑えてトップになったことは、多くの人にとって意外な驚きと言えるでしょう。

現代アーティストも多数利用される現状

さらに興味深いのは、現代で活動するアーティストの名前も多数、プロンプトに使用されている点です。特にイラストレーター部門では、WLOP、Greg Rutkowski、Krenz Cushartといったアーティストが、ダ・ヴィンチやダリといった著名な芸術家よりも多く利用されています。これらのアーティストは現在も活動しており、自身の作品がAIによって無断で学習・生成されている現状に、苦悩や不安を感じています。Greg Rutkowski氏は、MidjourneyやStability AIを相手取った集団訴訟にも参加しており、AIによる自身のスタイルの模倣について「ショックで不安」だと語っています。

映画監督や建築家など、多岐にわたる影響

アーティストだけでなく、映画監督や建築家といった分野でも、特定の人物の名前がAIアート生成に頻繁に利用されています。映画監督では、ウェス・アンダーソンが92,378回でトップとなり、ティム・バートン、ロジャー・ディーキンスが続きます。建築家では、ザハ・ハディッドが63,103回と圧倒的な人気を誇っています。また、映画フランチャイズでは「スター・ウォーズ」や「バットマン」、アニメでは「AKIRA」や「NARUTO」が最も多く利用されています。

AIアート生成における著作権と倫理の課題

クリエイターの権利保護の必要性

今回の調査結果は、AIアート生成ツールが、既存のアーティストのスタイルや作品を、意図的か否かにかかわらず、大規模に模倣・利用している現状を浮き彫りにしました。特に、現在も活動しているアーティストの名前が、彼らの許可なくプロンプトとして頻繁に使用されている事実は、クリエイターの権利保護という観点から、早急な対策が求められています。アーティスト自身がAI生成の対象となることへの抵抗感や、作品の独自性が失われることへの懸念は、今後ますます高まるでしょう。

「盗用」の線引きと今後の展望

AIアート生成における「盗用」の線引きは、非常に難しい問題です。学習データとして既存の作品を利用すること自体は、人間のアーティストが過去の作品からインスピレーションを得るのと似ているとも言えます。しかし、AIの場合は、その学習プロセスと生成スピードが桁違いであり、生成された作品が元のアーティストのスタイルを過度に模倣している場合、著作権侵害や不正競争とみなされる可能性があります。今後、法整備やツールの倫理的なガイドライン策定が進むことで、クリエイターとAI技術が共存できる道が模索されることが期待されます。

AIリテラシーの向上とクリエイター支援の重要性

今回の調査結果は、AIアート生成ツールの利用者が、どのようなアーティストや作品がAIの学習データとして利用されているか、そしてそれがクリエイターにどのような影響を与えているのかについての認識を深めるきっかけとなります。AIアートの恩恵を受ける一方で、その生成プロセスにおける倫理的な側面にも目を向け、クリエイターの権利を尊重する姿勢が、私たちユーザーにも求められています。また、AI技術の進歩と並行して、クリエイターが自身の権利を守り、新たな創作活動を展開するための支援策も、社会全体で考えていく必要があります。

画像: AIによる生成