
「永遠の化学物質」PFAS、米国の地下水汚染は推定9万カ所超か:調査で判明した衝撃の事実と今後の影響
米国におけるPFAS(ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物)による飲料水の汚染が、これまで推定されていたよりもはるかに広範囲に及んでいる可能性が新たな研究で示されました。この研究によると、環境保護庁(EPA)の基準値を超えるPFAS濃度を持つ地下水汚染サイトが、新たに79,891カ所存在する可能性が指摘されています。これは、以前の報告にあった57,412カ所を大幅に上回る数字であり、米国の水質汚染の実態を浮き彫りにしています。
PFAS汚染:隠された地下水の脅威
PFASは、その耐久性から様々な製品に使用されていますが、「永遠の化学物質」とも呼ばれ、自然界で分解されにくく、人体や環境に蓄積しやすい性質を持っています。国際がん研究機関(IARC)によって発がん性グループ1に分類されており、甲状腺疾患や肝臓疾患など、多様な健康リスクとの関連が指摘されています。
米国の水供給の約4割を占める地下水
米国における飲料水の約4割は地下水に依存しており、ボトルウォーター産業でも大量の地下水が利用されています。そのため、地下水のPFAS汚染は、多くの人々の健康に直接的な影響を与える可能性があります。
EPAの新基準とPFAS除去の課題
EPAは、2029年までにPFAS濃度を削減するための新たな規則を導入しましたが、PFASを水から除去することは容易ではありません。従来のろ過方法では効果が限定的であり、より高度な除去技術が必要とされていますが、そのコストは年間15億ドルに達すると推定されています。
研究手法と推定される汚染状況
この研究では、PFASプロジェクトラボが開発した「推定PFAS汚染モデル」が用いられました。このモデルは、土地利用状況に基づいてPFAS汚染の可能性が高い場所を特定するもので、軍事施設、航空機用泡消火薬剤(AFFF)の流出地点、主要空港、特定の産業サイトなどが、PFASの使用と排出が豊富で質の高い証拠がある場所として考慮されました。その結果、国土の広範囲にわたる汚染の現実的な像が示されています。
汚染サイトの地域的偏り
汚染サイトは、特に米国東部に集中している傾向が見られます。これは、PFAS化学物質が人口密集地で使用される傾向があり、軍事基地や空港、地方の消防署などで使用される消火用泡が原因となることが多いためと考えられます。これらの施設は、地域の人口密度と相関関係があるため、PFAS汚染もまた、人間の活動と密接に関連していることが示唆されています。
PFAS汚染、将来への警鐘と対策の必要性
PFAS汚染は、地球温暖化に次ぐ最も費用のかかる環境問題となる可能性があり、その対策には包括的な取り組みが不可欠です。専門家からは、PFASの排出源を特定し、代替物質の開発を進めること、そして不可欠でない用途でのPFASの使用を停止することが、問題解決への道筋として示唆されています。
汚染レベルの深刻さ
研究者によると、発見された汚染サイトの94%で、PFAS濃度がEPAの規制値(4ppt)を超えていました。一部のサイトでは、濃度が規制値の250万倍にも達する可能性が指摘されており、これは飲料水として消費されることを考えると、非常に憂慮すべき事態です。この高濃度汚染は、がんリスクを大幅に高める可能性があり、推定で2万人以上のがん患者増加につながるとも言われています。
今後の展望と課題
PFAS汚染の全容解明には、全国的なサイト検査と発生源の特定が不可欠です。EPAは、PFAS削減に向けた取り組みを進めていますが、汚染の広がりと深刻さを考慮すると、さらなる対策強化が求められます。PFASの使用を停止し、代替技術への移行を進めることで、将来世代への影響を最小限に抑えることが、現代社会に課せられた重要な課題と言えるでしょう。