
ロシアの front-line 都市ベルゴロド、空爆、停電、ドローン攻撃の現実
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領によるウクライナ全面侵攻開始から4年。ロシアは自国都市、特に国境に近いベルゴロドを、ウクライナからの報復攻撃の最前線として経験している。本記事は、この都市が直面する過酷な現実と、住民の複雑な感情を伝える。
ベルゴロドの日常:砲撃シェルターとドローン攻撃
都市を覆う「シェルター」と「防空ネット」
ベルゴロドの中心部には、文字通り「カバー」を意味する「ukrytiye」と書かれた砲撃シェルターが数百箇所に設置されている。当初は一時的なものだったが、2年が経過し、その存在は日常の一部となりつつある。バス停にはバリケードが築かれ、学校やショッピングセンターには対ドローンネットが張り巡らされている。これらは、ロシアがウクライナで始めた戦争が、予期せず自国にもたらされた現実である。国境からわずか40kmという地理的条件から、ベルゴロドはウクライナからの報復攻撃の直接的な標的となっている。
「突然、大きな音がした」:ドローン攻撃の恐怖
80歳のリュドミラさんは、自宅アパートがドローン攻撃を受けた際の恐怖を語る。寝室に侵入したドローンが爆発し、部屋は焼失。もし夫婦が同室にいれば、命を落としていた可能性もあった。「私たちに何があったのか。私たちはウクライナで暮らし、友人だったのに。今や殺し合っている」と、彼女は言葉を詰まらせる。このような直接的な被害は、ロシア国内の他の地域では遠い出来事かもしれないが、ベルゴロドでは日々の脅威となっている。
「眠れる」ドローンと奇跡の生還
ウクライナ国境に近いシェベキノへ向かう途中、取材班を乗せた車がドローン攻撃を受けた。遠隔操作で標的を待ち伏せしていた「眠れる」ドローンは、車両に衝突するも爆発には至らなかった。この「幸運な脱出」は、この地域の人々が日常的に直面する危険を如実に示している。爆発物満載のカムカゼドローンが意図した通りに機能しなかったことは、不幸中の幸いであった。
戦争の代償:失われた日常と複雑な感情
「悲しみの中に一人残された」:民間人の犠牲
ウクライナ側は民間人への攻撃を否定しているが、ベルゴロド地域ではこれまでに少なくとも440人が死亡している。リザさんは、2年前に父親と買い物に出かけた際に砲撃を受け、片足を切断することになった。彼女の母親はこの攻撃で命を落とした。叔父はリザさんの世話をしながら、「平和がほしい。子供たちが普通の人生を送れるようになってほしい」と、戦争がもたらした悲劇を訴える。子供たちがVampire(多連装ロケットシステム)やドローンについて知らなければならない現状に、深い懸念を示している。
「勝利の天使」とプロパガンダ
ベルゴロドでは、公式には「勝利の天使」と称される対空防衛の成果を称える展示が行われている。撃墜されたウクライナのミサイルやドローンの残骸が展示されているが、攻撃の理由や戦争の開始者については一切触れられていない。プロパガンダは、シェルターを象徴するキーホルダーにまで及んでいる。しかし、その一方で、住民の間には不満も蓄積している。73歳のガリーナさんは、5日間停電が続く生活を強いられ、当局への不満を口にする。「軍事的状況は理解できる。しかし、嘘は許されない」と、彼女は語る。
「勝利まで共に」:愛国心と疲弊
共産党事務所では、高齢の女性たちがロシア兵士のために迷彩ネットを編んでいる。「兵士は私たちの守りであり、私たちは彼らの守り。共に強く、勝利まで共に」と、彼女たちは語る。こうした愛国的な活動は、戦争を支持する人々の姿を映し出すが、一方で、長引く停電や生活の困難に直面する住民の疲弊も明らかである。この戦争が、ロシアにとって何をもたらしたのか、その利益はいまだ不明確なままである。
考察:front-line 都市が直面する「見えないコスト」
戦争の日常化と住民心理への影響
ベルゴロドの状況は、戦争が遠い出来事ではなく、日常生活に深く侵食する現実となりうることを示している。砲撃シェルターの恒久化、対ドローンネットの設置、そして突然の空爆や停電は、住民の精神的な負担を増大させている。特に、子供たちが戦争の恐怖に晒される状況は、長期的な影響を懸念させる。愛国心の高揚と、生活の困難さからくる不満との間で揺れる住民心理は、戦争の「見えないコスト」の大きさを物語っている。
戦争の地理的・心理的 front-line
ベルゴロドがロシアにとって「front-line都市」となったことは、戦争の地理的な広がりだけでなく、心理的な影響も国内に及んでいることを意味する。ウクライナからの報復攻撃は、ロシア国民に戦争の現実を突きつけ、その正当性や目的について疑問を抱かせる可能性がある。報道の自由が制限されるロシアにおいても、 front-line 都市の住民の声は、戦争の多面的な影響を理解する上で重要な手がかりとなる。
「平和」への渇望と戦争の不確実性
住民たちは皆、平和を望んでいる。しかし、外交努力は停滞し、和平交渉は難航している。たとえロシアに有利な条件で和平が成立したとしても、この4年間で失われたもの、そして今後も失われ続けるであろうものに対して、多くの人々が「本当に価値があったのか」と自問することになるだろう。戦争の終結が見えない中、ベルゴロドの住民が経験する困難と不満は、今後さらに増大していく可能性が高い。