
エチオピアのアフリカ・ホール、モダニズム建築の保存で国際的評価を獲得
エチオピアのアディスアベバに位置する、国連のアフリカ・ホールが、2026年度ワールド・モニュメンツ・ファンド/ノール・モダニズム賞を受賞しました。この賞は、モダニズム建築遺産の保存における卓越した功績を称えるもので、オーストラリアの建築事務所アーキテクタスが手掛けたアフリカ・ホールの修復プロジェクトが高く評価されました。この受賞は、アフリカのモダニズム建築遺産が国際的な舞台で認められた初めての快挙であり、その歴史的・文化的重要性を示しています。
アフリカ・ホールの歴史的意義と修復プロジェクトの概要
モダニズム建築の傑作、アフリカ・ホールの誕生
1961年にイタリア人建築家アルトゥーロ・メッツェディミによって設計・完成されたアフリカ・ホールは、アフリカ諸国のための外交空間として、また国連アフリカ経済委員会の本部として構想されました。1963年には、アフリカ連合の前身であるアフリカ統一機構の設立の場ともなり、その歴史的役割は計り知れません。メッツェディミは、機能的な明確さ、象徴的な開放性、そしてアディスアベバの景観を見渡す広大な眺望を重視し、アフリカにおけるモダニズム建築の代表的な作品として位置づけられています。内装には、カララ大理石、地元産の石材、そしてエチオピアの芸術家アフェワ・テクルの3つの巨大なステンドグラスが用いられています。
10年をかけた包括的な修復プロジェクト
2014年から2024年にかけて行われたアーキテクタスによる修復プロジェクトは、オリジナルの設計思想を尊重しつつ、現代の外交機関としての機能的要求を満たすことを目指しました。このプロジェクトでは、鉄筋コンクリート構造、モザイク仕上げ、そしてテクルの孫によって修復されたステンドグラスといった主要な建築的・芸術的要素が復元されました。さらに、メッツェディミがデザインした500点以上の特注家具も修復され、元の配置に戻されました。この包括的な修復により、アフリカ・ホールの機能性と美観が再生され、その歴史的価値が再認識されることとなりました。
アフリカにおけるモダニズム建築の保護の重要性
かつて建築革新の最前線にあった多くのモダニズム建築は、老朽化、公衆の無関心、時代遅れといった認識により、しばしば解体されたり、その建築的完全性が損なわれるような改変を受けたりしています。特に、ランドマークとしての指定や法的な保護を受けるには新しすぎる構造物も多く、脆弱な状態に置かれています。アフリカ・ホールのようなモダニズム建築の保存は、単に古い建物を維持すること以上の意味を持ちます。それは、過去の革新的なデザイン思想を未来に継承し、文化的多様性と国際理解を促進する上で不可欠な要素です。
アフリカ・ホールの事例から見るモダニズム建築保存の未来
アフリカのモダニズム建築遺産保護の先駆者として
アフリカ・ホールは、アフリカ大陸におけるモダニズム建築の最も重要な表現の一つとして、脱植民地化と民族自決の歴史的転換点において、国際的なアイデアと地域固有のアイデンティティを結びつけた建物です。エチオピア(アフリカで唯一植民地化されなかった国)の首都において最も著名な場所の一つに位置することからも、その建築は構造と目的における機能主義的合理性と、未来への楽観主義というモダニズムのオーラを融合させています。今回の修復により、メッツェディミのデザインの明快さが再び輝きを放ち、建物がモダニズムのランドマークであり、アフリカ外交の継続的な舞台であり続けるための野心、職人技、そして象徴的な力が明らかにされました。
モダニズム建築の保存における課題と展望
今回の受賞は、モダニズム建築遺産の保存がいかに重要であるか、そしてそれが直面する課題の大きさを改めて示しています。老朽化、資金不足、そして現代社会のニーズとの調和など、多くの困難が存在します。しかし、アフリカ・ホールの事例は、適切な計画と実行、そして国際的な支援があれば、これらの課題を克服し、貴重なモダニズム建築を次世代に引き継ぐことが可能であることを証明しています。今後、同様のプロジェクトがアフリカ大陸全体、さらには世界中で増加し、モダニズム建築遺産の保護と活用が進むことが期待されます。
現代的課題への対応と建築遺産の持続可能性
審査員は、修復プロジェクトが環境的・経済的持続可能性を高め、地域社会に具体的な利益をもたらした点も高く評価しました。これは、現代の建築遺産保存においては、歴史的価値の維持だけでなく、持続可能性や地域社会への貢献といった現代的な視点も不可欠であることを示唆しています。アフリカ・ホールの再生は、単なる過去の建物の修復に留まらず、未来に向けた持続可能な建築のあり方を模索する試みとしても、その意義は大きいと言えるでしょう。