
プラスチック規制条約、石油産出国が交渉を阻む:生産抑制の壁
2022年3月、国連環境総会(UNEA-5)で採択された、プラスチック汚染に対処するための法的拘束力を持つ国際的な文書を作成するという歴史的な決議。この決議に基づき、プラスチックの生産から廃棄までの全ライフサイクルを包括的に扱うための政府間交渉委員会(INC)が設置されました。しかし、2024年11月に韓国・釜山で開催されたINCの第5回会合(INC-5)では、条約締結に至らず、交渉は決裂しました。この交渉の停滞は、国際社会がプラスチック汚染問題に立ち向かう上で、新たな局面を迎えていることを示唆しています。
交渉決裂の背景:意見の対立
INC-5の交渉では、包括的な条約を求める国々と、プラスチック廃棄物のみに焦点を当て、生産には触れないことを望む国々との間で「深い亀裂」が生じました。特に、石油産出国とその同盟国は、プラスチックの生産段階への規制に消極的な姿勢を示しました。この意見の対立が、条約締結を困難にしている主要因の一つと考えられています。
石油産出国が交渉を阻む理由
プラスチックは、原油、天然ガス、石炭といった化石燃料から製造されます。石油産出国にとって、プラスチックの原料供給は重要な収入源です。そのため、プラスチックの生産量削減につながるような包括的な条約には、経済的な観点から抵抗があると考えられます。環境保護団体は、プラスチック汚染問題の根本的解決には生産量の削減が不可欠であると主張していますが、産油国の意向が交渉の大きな障害となっています。
プラスチック問題の未来への提言
生産段階からの包括的なアプローチの必要性
2024年12月の『ガーディアン』紙の報道によると、カリフォルニア大学バークレー校の研究者による科学誌『サイエンス』への論文では、プラスチックの生産に制限が設けられなければ、プラスチック汚染を終わらせることは「ほぼ不可能」であると結論付けられています。同研究では、生産制限がなければ、プラスチック廃棄物は2050年までに現在の2000万トンから1億2100万トンに増加すると予測されています。さらに、石油・ガス採掘、プラスチック生産、廃棄物管理に伴う温室効果ガス排出量も増加し、気候変動への影響も懸念されています。これらの研究結果は、プラスチック問題解決のためには、生産段階からの包括的な規制が不可欠であることを強く示唆しています。
国際社会の連携と持続可能な解決策の模索
ケニア環境管理局(NEMA)の執行ディレクターであり、INCプロセスのケニア担当者でもあるDr. Ayub Macharia氏は、国際的なプラスチック条約の重要性を強調しています。プラスチックは国境を越えて拡散するため、一部の国だけが対策を講じても、その効果は限定的であるという指摘です。すべての国が共通のルールに則って協力することで、プラスチック汚染という地球規模の課題に効果的に立ち向かうことができるはずです。今後、各国が経済的利益と環境保護のバランスを取りながら、より実効性のある解決策を見出すことが求められます。