
米国の自由貿易離脱は「ドミノ倒し」を引き起こさない?最新NBER論文が示す意外な結論
近年、米国が協力的な貿易体制から離脱する動きを見せる中、それが世界経済に連鎖的な悪影響を及ぼす「ドミノ倒し」となるのかが大きな議論を呼んでいます。しかし、最新のNBER論文は、この悲観的なシナリオに対して、定量的分析に基づいた驚くべき見解を提示しました。本記事では、米国の離脱がグローバルな貿易協力に与える影響について、論文の要旨とそこから導き出される今後の国際経済の展望を詳しく解説します。
米国の離脱がもたらす貿易協調への影響
米国の離脱による影響は限定的
論文の研究チームは、単純化された多国貿易モデルおよび、多国・多部門のグローバルネットワークモデルを用いて分析を行いました。その結果、米国が自由貿易体制から離脱しても、他国にとっての最適関税や、貿易協力体制の持続可能性に与える影響は最小限であることが明らかになりました。
影響が小さい理由
この分析結果の背景には、他国の国内および国際貿易における支出割合が、米国の離脱によって定量的にほとんど変化しないという事実があります。貿易の決定要因であるこれらの数値が安定しているため、ドミノ倒しのように世界的な貿易体制が崩壊する可能性は低いと結論付けられています。
弾力性の変化に依存しない頑健な結論
さらに注目すべき点は、この分析結果が貿易の弾力性や労働供給の弾力性に左右されないということです。モデルの前提条件を変化させても同様の結論が得られたことから、米国の自由貿易からの退出が即座にさらなる他国の離脱を引き起こすという懸念は、理論的にも薄いことが示唆されています。
本件が示唆する国際経済体制の強靭性
「ドミノ地域主義」の裏側にある新しい協調の動き
本研究は従来の「ドミノ地域主義」理論が危惧したような崩壊シナリオを否定するだけでなく、むしろ米国離脱後の「新たな動き」に注目しています。2025年以降、EUとメルコソルやインドとの協定、CPTPPの拡大といった特恵貿易イニシアチブが次々と進展しており、米国不在の中でも他国間での自由化が加速しているという事実は、グローバル経済の強靭さを物語っています。
今後の展望:米国なき世界貿易の再編
米国の保護主義的な政策が、逆に他国の結束を促し、結果として世界全体の貿易障壁を低下させるというパラドックスが生じる可能性があります。今後は、米国という一極的な牽引役が不在になったとしても、複数の経済圏が相互の連携を強化することで、自由貿易体制を維持、あるいは進化させていく新たな均衡点へと移行していくことが予測されます。