
20代でパートナーがいないと幸福度が低下? 長期未婚がもたらす「孤独の連鎖」と心のケア
20代でパートナーがいない状態が長く続くと、幸福度が低下し、孤独感が増大する可能性があることが、ドイツとイギリスの17,000人以上の若者を対象とした大規模な縦断研究で明らかになりました。10代の頃にはほとんど気にならなかった「未婚」という状態が、20代後半になると、パートナーがいる同年代の若者との間に顕著な幸福度の差を生むことが示唆されています。この研究は、若年期における長期的な未婚状態が、幸福感の低下にどのように関連しているのか、そしてパートナーシップがもたらす影響について深く掘り下げています。
この研究では、16歳から29歳までの13年間にわたり、11万人以上の参加者から毎年データを収集しました。研究開始時点では、すべての参加者が交際経験のない独身でした。研究チームは、参加者のうち誰がパートナーを見つけ、誰が未婚のままでいたのか、そしてその間の幸福度の変化を追跡しました。
未婚状態が続きやすい層とその要因
研究によると、特に未婚状態が長く続く傾向にあるのは、男性や、より高い教育水準を持つ人々でした。また、一人暮らしや実家暮らしの若者も、20代後半になってもパートナーがいない割合が高いことが示されました。これらの要因は、社会的な状況や心理的な要因が複雑に絡み合い、パートナーシップの形成時期に影響を与えていると考えられます。
幸福度が低いとパートナーシップ形成が困難に?
さらに興味深いのは、もともと幸福度が低い若者ほど、最初の交際関係を築くことが難しく、その結果として幸福度が低い状態が続くという「負のスパイラル」が存在する可能性です。このサイクルは、思春期にはほとんど影響がないように見えても、年を追うごとにその影響が積み重なり、20代後半にかけて顕著な差となって現れることが分かりました。
パートナーシップによる幸福度の変化
一方で、初めての恋愛関係が始まった参加者たちの状況は劇的に変化しました。人生の満足度は急上昇し、孤独感はすぐに、そしてその後も数年間にわたって低下しました。これは単なる一時的な「ハネムーン効果」ではなく、関係が継続する中で幸福感が持続することを示唆しています。
パートナーシップは精神的な健康問題の「万能薬」ではない
しかし、抑うつ症状に関しては、パートナーシップによって必ずしも改善は見られませんでした。これは、パートナーシップが孤立感を解消し、日々の満足度を高める効果がある一方で、より深い精神的な健康問題を自動的に解決するものではないことを示唆しています。パートナーシップは、孤立を防ぐ「社会的な足場」にはなっても、「万能薬」ではないと言えるでしょう。
考察:現代社会における「つながり」の多様性と個人の幸福
本研究は、20代という若年期における長期的な未婚状態が、単なる個人的な選択の結果ではなく、幸福度や孤独感といった精神的な健康に無視できない影響を与える可能性を示唆しています。これは、現代社会が「つながり」を重視する一方で、多様なライフスタイルのあり方や、個々人が抱える心理的な課題への理解を深める必要性を示唆していると言えるでしょう。
「つながり」の多様化と孤立感のジレンマ
現代社会では、恋愛関係だけでなく、友人関係、趣味のコミュニティ、オンラインでのつながりなど、多様な「つながり」が個人の幸福に寄与することが認識されています。しかし、本研究が示すように、特に恋愛関係やそれに伴う社会的なライフイベント(結婚、出産など)が周りの多くの人々に先行する場合、未婚状態が続くことは、社会的な孤立感や「取り残されている」感覚を増幅させる可能性があります。これは、社会全体として、多様な「つながり」の価値を認めつつも、個々人がどのような「つながり」を求め、それをどのように構築していくかという、新たな課題を提示しています。
「自己肯定感」と「社会からの承認」のバランス
未婚状態が続くことによる幸福度の低下は、単にパートナーがいないという事実そのものだけでなく、社会からの期待や「普通」とされるライフコースとの乖離から生じる自己肯定感の低下にも関連している可能性があります。特に20代後半は、社会的に「一人前」として扱われ、将来のライフプランが問われる時期でもあります。このような時期に、社会的な承認を得にくい状況が続くと、精神的な負担が増大する恐れがあります。したがって、個々人が自身のライフコースに自信を持ち、社会からも多様な生き方が認められるような環境づくりが重要となります。
データと個人の経験の橋渡し
本研究結果は、あくまで統計的な傾向を示すものであり、すべての長期未婚者が不幸であるとは限りません。個々人の経験は多様であり、未婚状態をポジティブに捉え、自己成長や他の活動に充実感を見出している人々も多く存在します。重要なのは、こうした研究結果を、個人の経験を否定するものではなく、自身の状況を客観的に理解し、より良い未来を築くための一つの情報として活用することです。また、社会全体としても、こうした研究結果を、孤独や精神的な健康問題に対する支援策を検討する上での示唆として捉えることが求められます。