
ザ・ブロード10周年:進化する美術館が描く、LA文化と2028年オリンピックへの壮大な未来図
ザ・ブロード美術館は2024年9月で開館10周年を迎えます。創設ディレクター兼社長のジョアン・ヘイラー氏は、この10年を「まだ若い機関」と捉え、過去の成功にとらわれず、常に未来を見据えて進化し続ける姿勢を強調しています。
拡張計画:2028年オリンピックに向けた新たな挑戦
開館10周年を記念し、ザ・ブロードは1億ドルを投じ、50,000平方フィートの新たな増築棟を建設中です。この拡張により、展示スペースは70%増加し、2028年の夏季オリンピック開催時期に合わせたオープンを目指しています。新棟には、自然光を取り入れたギャラリーや屋外の中庭、そして収蔵庫の一部を体験できる「ヴォールト・エクスペリエンス」が設けられます。
コレクション戦略:「個々のアーティスト」に焦点を当てる独自性
ザ・ブロードのコレクション戦略は、「個々のアーティストのキャリアに深く焦点を当て、その作品を深掘りして収集する」という点にあります。これにより、特定の時代や瞬間を網羅的にカバーするのではなく、個々の作家の視点を通して時代を表現することを目指しています。この戦略により、ジャン=ミシェル・バスキア、ロイ・リキテンスタイン、アンディ・ウォーホルなどのアーティストの作品を、他のどの美術館よりも多く展示することが可能になっています。
ダウンタウンL.A.の発展と美術館の役割
ザ・ブロードは、ダウンタウン・ロサンゼルスの発展と共に歩んできました。創設者のイーライ・ブロード氏が、MOCA(現代美術館)やウォルト・ディズニー・コンサートホールなど、近隣のランドマーク建設にも関わったように、美術館は地域社会への貢献を重視しています。ヘイラー氏は、ザ・ブロードがダウンタウンの文化的な中心地となること、そして、人々がテクノロジーから離れて交流できる「ソーシャルスペース」としての役割を担うことの重要性を語っています。
ザ・ブロードが牽引する文化復興と未来への投資
ザ・ブロード美術館の10周年と拡張計画は、単なるアート施設の成長物語に留まりません。これは、コロナ禍を経て、人々がリアルな体験や他者との繋がりを求める現代において、美術館が果たすべき新たな役割を示唆しています。物理的な空間でアートを鑑賞し、他者と感動を共有することは、デジタル化が進む社会における貴重な体験であり、ザ・ブロードはその「ソーシャルスペース」としての機能を強化することで、文化的なハブとしての存在感を増しています。
オリンピックを機に加速する都市文化への貢献
2028年のロサンゼルス・オリンピック開催に向けて、ザ・ブロードの拡張は、都市の国際的なイメージ向上と文化観光の活性化に大きく貢献するでしょう。新設される「ヴォールト・エクスペリエンス」のような、よりインタラクティブで没入感のある展示方法は、多様な背景を持つ訪問者にとって、アートとの新たな接点を提供します。これは、アートへのアクセスを民主化し、より幅広い層を惹きつけるための戦略であり、今後の都市型美術館のあり方を示す beacon となり得ます。