インド高等教育の新潮流:タミル・ナードゥ州が牽引する「プラクティス教授」採用

インド高等教育の新潮流:タミル・ナードゥ州が牽引する「プラクティス教授」採用

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インドの高等教育機関において、「プラクティス教授(Professors of Practice - PoP)」の採用が活発化しています。これは、産業界の専門家を教育現場に招き入れ、学術的な学びと実践的な経験との間のギャップを埋めることを目的とした取り組みです。最新の大学助成委員会(UGC)のデータによると、タミル・ナードゥ州が最も多くのPoPを採用しており、マハーラーシュトラ州、グジャラート州がそれに続いています。この動きは、インドの高等教育が理論から実践へと、より現実世界に即した方向へとシフトしていることを示唆しています。

学術界と産業界の架け橋となる「プラクティス教授」:導入状況とその意義

PoPとは何か?

プラクティス教授(PoP)とは、高等教育機関(HEIs)が、産業界で活躍する著名な専門家や実務家を、教育、指導、そして教室に現実世界の経験をもたらすために任命する職務です。これは、学術界と産業界の間の隔たりを埋めることを目指しています。UGCは2022年にPoPの採用に関するガイドラインを発表し、教育現場に専門的な知見を注入することを奨励しました。PoPの職務はあくまで一時的なものであり、正規のポストを占めるものではありません。資格要件としては、関連分野で最低15年の実務経験、特にシニアレベルでの経験が望ましいとされています。

各州の採用状況

UGCのデータによると、これまでに349の高等教育機関が合計1,841人のPoPを採用しています。そのうち、タミル・ナードゥ州が最も多く395人を採用しています。次いで、マハーラーシュトラ州が193人、グジャラート州とカルナータカ州がそれぞれ179人、170人のPoPを採用しています。

大学の種類別採用状況

産業界の専門家を学術界に迎え入れる動きにおいて、私立大学が最も積極的です。中央大学でのPoP採用はわずか15人に留まっています。一方、デムド・トゥ・ビー大学(deemed-to-be universities)は699人、私立大学は715人、州立大学は212人、そして各カレッジは200人のPoPを採用しています。インドには56の中央大学、460の州立大学、128のデムド・トゥ・ビー大学、510の私立大学があり、45,000以上のカレッジが存在することを考慮すると、中央大学におけるPoP採用の普及率は限定的であることがわかります。

PoP制度の目的と期間

UGCの担当者は、「工学、科学、技術、起業家精神などの様々な分野の著名な専門家を招き入れ、産業界や社会のニーズに応えるためのコースやカリキュラムを開発し、HEIが産業界の専門家と共同研究プロジェクトに取り組むことを可能にするため、プラクティス教授の概念が採用された。これにより、ドメインエキスパートによる学生への専門知識の提供とメンターシップが提供される」と述べています。また、PoPの在籍期間は、原則として3年を超えず、例外的な場合には1年延長が可能ですが、いかなる状況下でも合計で4年を超えることはないとのことです。このPoP制度は、様々な分野でリーダーシップを発揮した経験を持つ人々が、社会に貢献し、国家建設に寄与するために、名誉職として大学に関わる機会を提供するものです。

産業界との連携強化がインド高等教育の未来を拓く

PoP制度がもたらす教育の質の向上

プラクティス教授(PoP)制度の導入は、インドの高等教育に大きな変革をもたらす可能性を秘めています。産業界の第一線で活躍する専門家が教育現場に加わることで、学生は最新の業界動向、実践的なスキル、そして実社会で直面する課題についての生きた知識を得ることができます。これは、従来の理論中心の教育だけでは得られない貴重な学びとなり、卒業後のキャリア形成において学生を有利な立場に置くでしょう。特に、技術革新が著しい分野や、急速に変化する市場に対応する必要がある分野において、PoPの存在は不可欠と言えます。

全ての大学での均てん化に向けた課題

現状では、私立大学がPoPの採用に積極的である一方、中央大学での採用が遅れているという課題が見られます。PoP制度の恩恵をより多くの学生に届けるためには、中央大学やその他の教育機関においても、その重要性を認識し、積極的な採用を促進する仕組みが必要です。これには、UGCからのさらなる支援や、大学側がPoPの魅力を理解し、積極的にアプローチしていく姿勢が求められます。また、PoPとして大学に関わる専門家にとっても、自身の知識や経験を次世代に伝えるというやりがいだけでなく、一定のインセンティブやサポート体制が整備されることが、制度の持続的な発展につながるでしょう。

インドの競争力強化への貢献

産業界の知見を教育に直接活かすPoP制度は、インド経済全体の競争力強化にも貢献すると考えられます。産業界が求める人材像と教育機関が育成する人材像との間のミスマッチを解消することで、より即戦力となる人材の輩出が期待できます。これは、インドがグローバル市場で優位性を確立していく上で、極めて重要な要素となります。PoP制度のさらなる普及と質の向上が、インドのイノベーション能力を高め、持続的な経済成長を牽引していく原動力となることが期待されます。

画像: AIによる生成