
フランク・ロイド・ライトの失われた建築物を象徴する新ロゴ:デザインに込められた「深い空虚」とは?
ニューヨークのデザインエージェンシー「Order」が、フランク・ロイド・ライト建築物保存協会(Frank Lloyd Wright Building Conservancy)のために、新たなビジュアルアイデンティティを制作しました。このアイデンティティは、ライトが自身のサインに用いた赤い四角形と、彼が幼少期に使用していた木製ブロックに着想を得ています。
ロゴに込められた「失われた建築」への想い
新しいロゴは、4x4の小さな四角形のグリッドで構成されており、中央の1つの四角形が欠けています。この「欠けた」形は、ライトの建築物が放置されたり、失われたり、危機に瀕したりすることによって生じる「深い空虚」を象徴しています。保存協会によれば、このデザインは、その形態の印象深さと同じくらい意図的な意味を持っています。
ライトの生涯と作品へのオマージュ
四角形という形状は、ライトが自身の作品に署名やタグとしてしばしば組み込んだ赤い四角形を想起させます。これは、建物に配置された赤いタイルや、図面に印刷された赤い四角形などに見られます。この形状は、ライトの建築物を幾何学的かつグラフィカルに表現するための基盤となり、ブロック状にデフォルメされた「落水荘」なども、このグラフィック言語を用いて表現されています。
保存の重要性を強調するデザイン
Orderによると、ライトの建築への魅了は、母親から贈られた「フローベルのブロック」から始まったとされています。このアイデンティティは、個々の建築物に合わせたイラストシステムを作成することで、そのアイデアをシンボルのグラフィック言語で拡張しています。また、彩度を抑えた緑、赤、黄、青からなるカラーパレットは、ライトの建築物に見られる素材、質感、色合いにインスパイアされており、ステンドグラスの緑や床の赤などが用いられています。
タイプフェイスと「SaveWright」への展開
フォントには、Optimo Type Foundryによってデザインされた「Reply」のカスタマイズバージョンが採用されています。これは、ライトが愛用していたタイプライターのフォントに敬意を表したものです。ライトが書簡で愛用していたタイプフェイスは「Vogue Intertype」であり、このフォントは「Reply」にインスピレーションを与え、アメリカのモダンデザインの発展における重要な段階を呼び起こします。この新しいブランディングは、関連コミュニケーションブランド「SaveWright」にも使用され、その際にはロゴの「欠けた」四角形が強調されるように、半ば反転した形で使用されます。
新ロゴが問いかける、失われた建築の価値と未来への警鐘
建築遺産保護の新たな視点
フランク・ロイド・ライト建築物保存協会の新しいビジュアルアイデンティティは、単なるロゴのリニューアルにとどまらず、建築遺産保護に対する深いメッセージを内包しています。中央の「欠けた」四角形は、単にデザイン上のアクセントではなく、ライトの貴重な建築物が失われることの「深い空虚さ」を視覚的に表現しています。これは、建築物が失われることの悲劇と、その保護の緊急性を強く訴えかけるものです。
「空虚」を埋めるための、組織の役割と展望
Orderがデザインした「欠けた」ロゴは、保存協会が直面する課題、すなわちライトの建築遺産をどのように次世代へと継承していくかという本質的な問いを私たちに投げかけます。この「空虚」は、単なる喪失の象徴ではなく、未来への行動を促すための「余白」とも捉えられます。保存協会は、この新しいアイデンティティを通じて、より多くの人々の関心を引きつけ、ライト建築の保存活動への参加を促進していくことが期待されます。
デザイン思考がもたらす、遺産保護への新たなアプローチ
幼少期のブロック遊びから着想を得たデザインは、ライトの創造性の源泉にまで遡り、建築物そのものの構造や素材感をグラフィカルに表現しています。これは、デザインが単に美的な側面だけでなく、その背後にある物語や理念を伝え、人々の共感を呼び起こす強力なツールとなり得ることを示しています。このアプローチは、今後、他の建築遺産保護団体においても、より創造的で効果的なコミュニケーション戦略を構築する上での参考となるでしょう。