3分でアルツハイマーの兆候を検出:革新的な脳波検査が自宅での早期発見を可能に

3分でアルツハイマーの兆候を検出:革新的な脳波検査が自宅での早期発見を可能に

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アルツハイマー病の早期発見を目指す新技術「Fastball EEG」

アルツハイマー病の兆候を、診断から数年前に、わずか3分で検出できる可能性を秘めた新しい脳波検査が開発されました。英国のバース大学とブリストル大学の研究者らが開発したこの「Fastball EEG」と呼ばれる技術は、自宅での使用も視野に入れた実用的なツールとして注目されています。この検査は、軽度認知障害(MCI)の前兆となる脳活動の変化を捉えることを目的としています。

Fastball EEG:画期的な診断アプローチ

概要と特徴

Fastball EEGは、被験者が一連の画像を見ている間の脳の電気的活動を記録します。この検査は「受動的」なEEG検査であり、被験者に質問したり情報を記憶させたりする必要がないため、不安、学歴、文化、言語などの影響を受けにくいという利点があります。バース大学心理学部認知神経科学者のジョージ・ストスカート博士は、「Fastballは、すでに診断されているアルツハイマー病と、発症リスクが非常に高い個人の両方に対して感度が高い」と述べています。また、「EEGデータ収集は自宅でも完全に可能であり、実用的なツールとなる」とも語っています。

臨床試験の結果

英国の研究チームが実施した臨床試験では、軽度認知障害(MCI)と診断された53名の患者と、認知機能に問題のない高齢者54名を対象にこの検査が実施され、1年後に再検査が行われました。その結果、MCI患者は認知機能に問題のないグループと比較して、「著しく低下した」記憶関連の脳反応を示したことが明らかになりました。この研究結果は、学術誌「Brain Communications」に掲載されました。

研究の信頼性と今後の課題

ストスカート博士は、「健常な高齢者におけるテスト・再テスト信頼性に満足している」とし、「1年後の追跡調査でも測定値は安定しており、Fastballは健常者に対して一貫した結果を提供する」と述べています。しかし、研究における主な限界として、費用とリソースの制約からMCI患者のバイオマーカーデータが得られなかったことを挙げています。現在、英国と米国でそれぞれ1,000人の患者を対象とした大規模な臨床検証研究が進められており、これらの研究にはバイオマーカーのデータも含まれています。

アルツハイマー診断への期待と限界

この技術が医師の診察室、記憶クリニック、または家庭で利用できるようになり、より早期のアルツハイマー病診断を可能にすることが期待されています。早期診断により、病気の進行が早い段階で効果を発揮するドナネマブやレカネマブのような薬剤へのアクセスを患者が早期に得られる可能性があります。しかし、アルツハイマー協会のクリストファー・ウェーバー博士は、この技術が記憶喪失の原因を特定するものではないと指摘しています。そのため、この検査結果がアルツハイマー病のリスクや健康状態について何を意味するのかは不明であり、さらなる研究が必要であると述べています。ウェーバー博士は、たとえこの技術が将来的に有効であることが証明されたとしても、治療やリスク軽減のための情報提供には、病気関連のバイオマーカーや脳画像検査などの追加検査が必要になるとの見解を示しています。

専門家の見解と今後の展望

Fastball EEGの補完的役割

ウェーバー博士は、Fastball EEGが初期スクリーニングや、患者と医師の対話における情報提供に役立つ可能性があるとしながらも、PETスキャン、血液検査、筆記式の認知評価などの他の診断方法を補完する可能性についても言及しています。

自宅検査の重要性と注意点

自宅でのスクリーニングや検査が将来的に導入される場合、慎重かつ管理された方法で行われるべきだとウェーバー博士は助言しています。また、アルツハイマー病や認知症関連の検査を検討する際には、医療提供者と相談し、自身が検査の対象となるかを確認することが重要であると強調しています。

アルツハイマー病早期診断の意義

Fastball EEGのような革新的な技術は、アルツハイマー病の早期発見と介入に大きく貢献する可能性があります。現行の診断方法に加え、このような簡便かつ迅速な検査が普及することで、より多くの人々が早期に適切なケアを受けられるようになることが期待されます。しかし、その有効性と信頼性を確立するためには、さらなる大規模な臨床研究と、他の診断手法との統合が不可欠です。

画像: AIによる生成