
ヨウジヤマモトとウブロ、漆黒に潜む秘密 - 光にかざすことで現れる革新時計
ファッション界の革新者であるヨウジヤマモトと、革新的な時計製造で知られるウブロが、大胆なコラボレーションにより、新しいタイムピースを発表しました。この時計は、光にかざすことで初めてその時刻と日付が現れるという、秘密主義と洗練されたデザインが融合した特別な一本です。本記事では、このユニークな時計の背景にある両ブランドの哲学と、その革新的なデザインについて掘り下げていきます。
ヨウジヤマモト:型破りな創造性の源泉
1943年生まれのヨウジヤマモトは、法学を学んだ後、ファッション界に革命をもたらしました。1981年のパリデビューでは、黒を基調としたオーバーサイズでジェンダーレスなデザインを発表し、それまでの高級ファッションの概念を覆しました。彼の作品は、しばしば戦争で亡くなった父親への複雑な思いや、若き日のストリートでの経験からくる「怒り」や「反骨精神」に根差しており、それが大胆なデザインや非対称性、素材感の探求へと繋がっています。武道家としても知られ、職人的な手仕事で衣服を制作する姿勢も、彼の独自性を際立たせています。
ウブロ:常識を覆すマテリアルとデザイン
一方、ウブロもまた、時計業界において既成概念を打ち破ってきたブランドです。特に、当時としては異例であったラバーをゴールドの時計に採用し、成功を収めたことは有名です。2006年に発表された「オールブラック」コレクションでは、異なる質感の黒を重ねることで、所有者のみが視認できる、所有者だけが知る秘密のような時計を発表し、大きな反響を呼びました。
二つの哲学の共鳴、そして「ブラック」へのこだわり
ヨウジヤマモトの「黒は、単なる色ではなく、形を精査し、シルエットとテクスチャーを際立たせるもの」という哲学と、ウブロの「黒を生きる素材として捉え、光との相互作用で表情を変える」というアプローチは、まさに共鳴します。この共通の美学が、2020年のパートナーシップへと繋がりました。
ヨウジヤマモトとウブロのコラボレーションモデル
最初の出会い:2020年、ビッグ・バン GMT オールブラック ヨウジヤマモト
2020年4月、ウブロの銀座ブティックオープンを記念して、50本限定で「ビッグ・バン GMT オールブラック ヨウジヤマモト」が誕生しました。マイクロブラスト加工とポリッシュ仕上げを施したブラックセラミックを採用し、東京限定という希少性も相まって話題となりました。
進化する「黒」:ビッグ・バン カモ ヨウジヤマモト
その反響を受け、同年9月には200本限定の「ビッグ・バン カモ ヨウジヤマモト」が登場。マットブラックセラミックのケースに、多層的なバイオモルフィックパターンが重ねられた文字盤が特徴です。ストラップは、時計業界では初となる、個別にカット、組み立て、加硫されたものが採用され、ミリタリー調のデザインが、ブラックカモフラージュで再解釈されました。
最新作:クラシック・フュージョン オールブラック カモ
そして今回発表された「クラシック・フュージョン オールブラック カモ」は、42mmのケースに、ウブロの「MHUB1110」ムーブメントとスケルトン化されたローターを、スモークサファイアのケースバックから覗かせます。特徴的なブラックカモフラージュの文字盤は、光にかざすことで時刻と日付が浮かび上がるようにデザインされており、ヨウジヤマモトのサインが6時位置に配されています。
「隠す」美学と「見せる」技術の融合
「黒」が語るもの:デザイナーの哲学
ヨウジヤマモトは、「黒は、控えめでありながら自信に満ちている。ウブロとは、時間と布を表現に変えるというビジョンを共有している」と語ります。カモフラージュ柄は、その順応性、進化、そして独自の物語を定義する能力を称賛しており、この時計が単なるアクセサリーではなく、自己表現の媒体であることを示唆しています。
光と影の戯れ:ウブロ CEOの視点
ウブロ CEOのジュリアン・トレナール氏は、「ヨウジヤマモトにとって黒は、本質を明らかにする。ウブロにとって黒は、彫刻され、重ねられ、折り畳まれ、各表面が光と異なる相互作用をする生きた素材だ。このプロジェクトは、クラシック・フュージョンモデルとしては初のコラボレーションであり、私たちは、高級とは輝くものではなく、持続するものであるという信念を共有している」と述べています。この言葉は、両ブランドが共有する、真の価値は目に見える派手さではなく、時間と共に色褪せない本質にあるという考え方を浮き彫りにします。
今後の展望:ファッションと時計業界への示唆
このヨウジヤマモトとウブロのコラボレーションは、ファッションと高級時計業界における、さらなる異分野融合の可能性を示唆しています。単にブランドロゴを冠するのではなく、両者の哲学や美学を深く理解し、それを製品に昇華させることで、これまでにない価値を創造できることを証明しました。特に、「光にかざして現れる」というギミックは、所有者だけが知る秘密の共有という、新たなラグジュアリー体験を提供します。今後、このような「隠された」デザイン要素や、所有者の感性に訴えかけるインタラクティブな要素を持つ時計が増えていくかもしれません。