150年の軌跡:イラン・グラフィックデザインの変遷と独自性の探求

150年の軌跡:イラン・グラフィックデザインの変遷と独自性の探求

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イランの豊かなグラフィックデザインの遺産は、150年以上にわたり、国の文化、社会、政治の変遷と共に進化してきました。この度、マジェド・アッバシ氏の編集・組織による『The History of Graphic Design in Iran』が、この包括的な歴史を初めて体系的にまとめ、出版されることになりました。本書は、2世紀近くにわたるペルシャ/イランのグラフィックデザインの系譜を、2巻組の百科事典的なビジュアルリフレクションとして提示しています。

**イラン・グラフィックデザインの歩み**

本書は、1794年のカージャール朝から現代に至る182名のデザイナー、イラストレーター、書道家、グラフィックアーティストの業績と、デザインを取り巻く84のテーマ別エントリを収録しています。特に、1871年(西暦)を起点としているのは、近代イラン史における重要な転換期であり、西洋文化との接触、そして国内初の近代教育機関であるダルル=フヌン設立と印刷技術の発展が、ビジュアルデザインの進化に寄与したからです。

黎明期から「黄金時代」へ

第二次世界大戦後、特に1950年代に入ると、イランのグラフィックデザインは商業的な製品、映画ポスター、雑誌などにその活躍の場を広げ、「広告画家」として知られる先駆者たちが登場しました。テヘランに最初の独立したグラフィックデザインスタジオが設立され、カズィミ、バリラニ、ジャバディプール、アフマリーといったデザイナーたちが、商業広告から文化的なポスターまで多岐にわたるプロジェクトを手がけました。テヘランの主要な美術学校にグラフィックデザインの学術プログラムが導入されると、ヨーロッパやアメリカのデザイン動向の影響を受けた新世代が登場し、1960年代から1970年代にかけては、イラン・グラフィックデザインの「黄金時代」を築き上げました。

革命を経た独自のデザイン言語

1979年のイスラム革命以降、イランのグラフィックデザインは新たな局面を迎えます。革命期からイラン・イラク戦争後にかけて、新しい世代のデザイナーたちは、伝統的なカリグラフィーや視覚的形態と現代的なデザイン手法を融合させ、ペルシャ文字とタイポグラフィを重視することで、独自の視覚的アイデンティティを確立しました。これは、伝統と革新、そしてローカルなアイデンティティとグローバルな理解を調和させる、特有のデザイン言語の誕生を意味します。

制約下での創造性と国際的影響

イランのデザイナーたちは、社会政治的な制約の中で、創造性を発揮し続けてきました。本書の編纂においても、政治的・社会的な制約、印刷・出版プロセスの実務的な困難に直面しましたが、それらを乗り越え、豊富な素材と研究に基づいた視覚的・専門的な言語を提示しています。1960年代以降、グローバルなデザイン運動の影響を受けつつも、イランのデザイナーたちは常にナショナル・アイデンティティとローカルなメッセージを、独自の視覚言語で伝えてきました。

**イラン・グラフィックデザインの未来**

『The History of Graphic Design in Iran』は、単なるデザイナーの作品集ではなく、イランの芸術と文化における重要な章を称えるものです。本書は、ペルシャ語と英語のバイリンガル仕様で、2026年にテヘランで出版予定であり、同年のテヘラン国際ブックフェアでの展示も予定されています。この包括的な歴史の記録は、イラン・グラフィックデザインの過去、現在、そして未来への理解を深める貴重な資料となるでしょう。

画像: AIによる生成