
ロバート・レッドフォード、朝鮮戦争の悲劇『WAR HUNT』で俳優キャリアを切り拓く:低予算インディーズ映画が描いた人間の葛藤
ロバート・レッドフォードが89歳で亡くなり、ハリウッドでの長いキャリアと、サンダンス・インスティテュートやサンダンス映画祭を通じてインディペンデント映画を支援してきた功績を称える追悼の日となった。彼の俳優としてのキャリアは1960年のテレビ出演から始まり、その後映画界へと進み、晩年には様々な活動家としても活躍した。そのキャリアを通じて、レッドフォードは持ち前のカリスマ性と自然体な演技で、コメディ、ドラマ、アドベンチャーなど、多岐にわたる役柄を演じ、その多くはヒーロー的なキャラクターであった。
『WAR HUNT』で描かれた朝鮮戦争の過酷さ
主演としてのキャリアの幕開け
1962年の映画『WAR HUNT』は、ロバート・レッドフォードが長編映画デビューを果たした記念すべき作品である。朝鮮戦争を舞台にしたこのモノクロ映画で、レッドフォードは新米兵士ロイ・ルーミスを演じた。本作は、ジョン・サクソン演じる軍曹(シドニー・ポラック)の命令に背き、夜間パトロールで敵兵をナイフで殺害する精神的に不安定な兵士レイモンド・エンドウアを軸に物語が展開される。レッドフォード演じるルーミスは、当初、他の兵士たちからエンドウアに近づかないように警告されるが、次第に彼に惹かれていく。
戦争がもたらす人間性の葛藤
激しい戦闘で負傷し、死んだと思われたルーミスが奇跡的に生還する場面では、レッドフォードは戦争によって打ち砕かれた兵士の純粋さを、鋭い虚無感をたたえた表情で表現している。この映画は、精神衛生をテーマにした『SHOCK CORRIDOR』(1964年)やSFホラー『INVASION OF THE BEE GIRLS』(1973年)などを手掛けたデニス・サンダースが監督を務めた。低予算でわずか15日間で撮影されたインディペンデント映画でありながら、兵士たちの人間的な側面と、エンドウアが陥った精神的な深淵を尊重して描いている点が評価されている。
レッドフォードとポラックの運命的な出会い
『WAR HUNT』は、ロバート・レッドフォードとシドニー・ポラックが初めて共に仕事をした作品である。ポラックは2008年に亡くなる直前、タイム誌のインタビューで、この作品で友人となり、「魂の片割れ」のような存在になったと語っている。二人はその後、『THIS PROPERTY ISCONDEMNED』(1966年)など、合計7本の映画でタッグを組むことになる。この作品は、後に二人の映画製作に対する哲学が次第に divergence していったことを示唆している。
『WAR HUNT』から見る、俳優キャリア初期の葛藤と成長
インディペンデント映画の重要性
『WAR HUNT』は、製作費の低さや短期間での撮影といった制約の中で、人間の内面、特に戦争がもたらす精神的な影響を深く掘り下げている点で、インディペンデント映画の可能性を示している。インディペンデント映画監督のジョン・セイルズも、この作品が単なる低予算映画以上の価値を持つことを指摘しており、その独立性と芸術性を称賛している。これは、商業的な成功だけでなく、社会的なメッセージや芸術性を追求する作品がいかに重要であるかを示唆している。
若きレッドフォードの繊細な演技
本作で「デビュー」とクレジットされたレッドフォードの演技は、単なるハンサムな若手俳優という枠を超え、戦争の過酷さの中で揺れ動く兵士の繊細な心理描写に成功している。特に、傷つき、絶望した表情は、観る者に強い印象を残す。この初期の経験が、後の多様な役柄を演じる上での基盤となったことは間違いないだろう。彼のキャリア初期の作品に触れることは、偉大な俳優がどのようにしてその地位を確立していったのかを理解する上で非常に有益である。