
フルタイムで働けない女性たちを救う「Rise and Thrive」の挑戦:家庭と仕事を両立させる新しい自立支援の形
介護や育児、家庭の事情によりフルタイムでの就業が困難な女性たちは、経済的な不安定さに直面しがちです。シンガポールのチャリティ団体「Rise and Thrive」は、そんな女性たちが持つスキルを活かし、自宅で持続可能な収入を得られるようビジネス構築を支援しています。今回は、代表のサプナ・ケワルラマニ・マルホトラ氏の取り組みを通じ、個々の事情に寄り添った新しい自立支援のあり方を探ります。
自宅ビジネスで経済的自立を支える「Rise and Thrive」の仕組み
偶然の出会いから始まった支援の輪
2019年、数学の家庭教師ボランティアをしていたマルホトラ氏は、担当していた少女の母親が経済的に困窮していることを知りました。その母親が自宅で焼いていたタルトの販売を支援したことがきっかけとなり、同様の悩みを抱える女性たちをサポートする「Rise and Thrive」が設立されました。現在では100名以上のボランティアとともに、91名もの女性たちの起業を支援しています。
体系化されたメンターシッププログラム
同団体では、3年間の継続的な支援プログラムを提供しています。最初の6ヶ月間はブランディングや価格設定などのビジネスの基礎を学び、その後は企業とのネットワークを通じて販路を拡大します。また、会計能力の向上など、継続的に成長できるような学習の機会も提供されています。
多様な背景を持つ女性たちへのサポート
支援の対象は、育児中のシングルマザー、介護が必要な家族を抱える女性、元受刑者など多岐にわたります。共通しているのは「フルタイムの仕事に就くことが困難」という事情です。彼らは団体からの金銭的な助成だけでなく、ビジネスを通じて自信を取り戻し、自分自身や家族を支える基盤を築いています。
「安定した家庭」を基盤とした持続可能な自立の展望
「フルタイム偏重型」の支援の限界
従来の就業支援は「フルタイム雇用への復帰」をゴールとすることが一般的です。しかし、マルホトラ氏が指摘するように、家庭内のケアニーズが高い状況下で強引にフルタイム勤務を求めても、家庭環境が崩壊しては元も子もありません。本件は、従来の画一的なキャリア支援の枠組みでは救いきれない、「柔軟な働き方こそが不可欠な人々」の存在を浮き彫りにしています。
「マイクロビジネス」がもたらす自己肯定感
この取り組みの真の価値は、単なる収入確保に留まらない「自己肯定感の醸成」にあると考えられます。家庭を守りながら、自分の力で売上を作り出し、社会と繋がるという体験は、将来的にフルタイム労働を選択できる環境が整った際にも、強力な自信とスキルとして活きるはずです。これからの時代、福祉とビジネスを掛け合わせたこうした「小規模でも継続可能な自立のプラットフォーム」は、多様な働き方を認める社会において不可欠なインフラとなるでしょう。
「意識的な消費」によるコミュニティ全体の底上げ
最後に重要なのは、社会側の意識変革です。利便性を優先して大企業から購入するだけでなく、地域の女性たちが営む小さなビジネスを意識的に選択し、ギフトや食事に取り入れること。こうした「意識的な消費」という小さなアクションが、支援を必要とする女性たちの経済的自立を支える強力なエンジンとなるはずです。