
PolyAI、8600万ドルのシリーズD資金調達でエンタープライズ向け音声AIを強化
ロンドンを拠点とする会話型AIプロバイダーであるPolyAIは、エンタープライズ向けカスタマーサービスプラットフォームのグローバル展開を加速するため、シリーズDラウンドで8600万ドルを調達したことを発表しました。この資金調達により、同社の累計資金調達額は2億ドルを超え、CX(カスタマーエクスペリエンス)自動化の分野における同社の地位をさらに強固なものにしました。
PolyAIの成長を牽引する最新資金調達
シリーズDラウンドの概要
PolyAIは、Georgian、Hedosophia、Khosla Venturesが共同で主導するシリーズD資金調達ラウンドで8600万ドルを調達しました。このラウンドには、NVentures(NVIDIAのベンチャーキャピタル部門)、British Business Bank、Citi Ventures、Squarepoint Ventures、Sands Capital、Zendesk Ventures、Point72 Venturesなども参加しました。この巨額の資金調達は、PolyAIの技術革新と市場拡大への強いコミットメントを反映しています。
Agent Studioプラットフォームの進化
調達した資金は、主に同社のAgent Studioプラットフォームの開発と、グローバルな市場開拓活動の拡大に充てられる予定です。Agent Studioは、企業がエンタープライズグレードの会話型AIエージェントを構築、管理、展開するための音声ファーストのオムニチャネルプラットフォームです。このプラットフォームは、生成AIの可視性、ガバナンス、運用信頼性を重視しており、特に規制の厳しい金融サービスやヘルスケア、旅行などの業界にとって重要です。
エンタープライズAI市場の成長
会話型AI市場は、2025年の170億5000万ドルから2031年には498億ドルへと、年平均成長率24.7%で成長すると予測されています。音声AIは、実験的なIVRシステムから、カスタマーサービスのインフラストラクチャとして主流になりつつあります。多くの企業が、顧客エンゲージメントの向上と運用効率の改善を目指し、音声AIの導入を加速させています。
PolyAIが切り拓く「エージェンティックエンタープライズ」の未来
AIによる顧客体験の変革
PolyAIのCEO兼共同創設者であるNikola Mrkšić氏は、「エージェンティックエンタープライズ」という概念を提唱しています。これは、顧客、従業員、AIエージェントのリアルタイムの行動を理解し、それらを連携させて成功を導く、生きたシステムです。このアプローチにより、問題が顕在化する前に検知し、対応することが可能になります。
運用効率とROIの向上
PolyAIのAIを活用したカスタマーサービスエージェントを導入した企業では、1時間あたりの問題解決率が14%向上し、問題対応にかかる時間が9%短縮されたという報告があります。さらに、AIを活用したカスタマーサービスは、運用コストを20〜30%削減する可能性も示唆されています。多くの企業がAIをビジネスの複数の機能に導入しており、その効果は着実に現れています。
今後の展望と課題
PolyAIのような企業が高度な会話型AIプラットフォームを提供することで、企業は顧客体験の自動化とパーソナライゼーションをさらに推進できるでしょう。しかし、AI導入における実行ギャップも依然として存在します。人間のようなAI会話を効果的に展開できていると報告する企業はまだ少なく、この分野でのさらなる改善と標準化が求められています。PolyAIの今回の大型資金調達は、これらの課題を克服し、エンタープライズ向け音声AI市場の成長を加速させる一助となることが期待されます。