トランプ政権、気候変動政策の根幹を覆す:科学的知見の撤回と規制緩和の衝撃

トランプ政権、気候変動政策の根幹を覆す:科学的知見の撤回と規制緩和の衝撃

環境問題気候変動対策基準トランプ政権気候変動環境規制米国温暖化ガス

米国で、トランプ政権による気候変動政策の根幹を揺るがす大規模な規制緩和が進められています。ホワイトハウスは、温室効果ガス排出規制と気候変動対策の科学的根拠となってきた「危険性評価(endangerment finding)」を覆す方針を表明しました。環境保護庁(EPA)は、この2009年のオバマ政権時代の決定を正式に撤回する最終規則を発行する予定です。この動きは、アメリカ史上最大級の規制緩和と位置づけられ、経済への影響とともに、地球温暖化対策への懸念も生じています。

発表された内容とその背景

1. 「危険性評価」の撤回:気候変動対策の法的根拠の喪失

今回の規制緩和の中心は、2009年にオバマ政権下でEPAが下した「危険性評価」の撤回です。この評価は、二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスが、公共の健康と福祉を危険にさらすという科学的結論に基づいています。この評価は、自動車、発電所、その他の汚染源からの排出を規制するための、クリーンエア法に基づくほぼ全ての気候関連規制の法的根拠となってきました。その撤回は、気候変動対策の法的基盤を大きく弱めることになります。

2. 経済的メリットと規制緩和の規模

ホワイトハウスは、この規制緩和が「アメリカ史上最大級の規制緩和」であり、「国民に1兆3000億ドルの負担となる規制を節約させる」と主張しています。特に、乗用車、SUV、トラック向けの燃費基準の緩和により、平均的な車両あたり2,400ドル以上の節約が見込まれるとしています。これは、経済成長を優先し、環境規制が経済活動を過度に抑制しているという政権の主張を反映したものです。

3. 環境保護団体からの強い反発

一方、環境保護団体からは、この決定は「連邦政府の気候変動対策への攻撃」であり、「許容できない」との強い批判が出ています。彼らは、この決定が気候変動による洪水、熱波、山火事などの自然災害の深刻化を加速させ、国民の健康と安全を脅かすと主張しています。訴訟も辞さない構えを見せており、法廷闘争は避けられない見通しです。

4. 科学的コンセンサスとの乖離

トランプ大統領自身が気候変動を「でっち上げ」と呼ぶなど、政権は科学界のコンセンサスとは異なる見解を示してきました。EPA長官も、気候変動対策のために「国を破産させる」ような政策は必要ないと批判しています。しかし、米国科学アカデミーは、2009年の「危険性評価」の根拠となった科学は「正確であり、その有効性は証明されており、さらに強力な証拠によって裏付けられている」と結論付けています。気候変動による人々の健康や福祉への悪影響は「科学的に論争の余地がない」というのが科学界の見解です。

今後の展望と影響:経済と環境のジレンマ

1. 「危険性評価」撤回の長期的な影響

「危険性評価」の撤回は、短期的な経済的メリットを強調する一方で、長期的な環境への影響は計り知れません。温室効果ガスの排出削減目標が事実上撤廃されることで、地球温暖化の進行が加速する可能性があります。これにより、異常気象の頻発や激甚化、海面上昇といった、より深刻な気候変動の影響が現実のものとなるリスクが高まります。

2. 国際社会における米国の立場

気候変動対策における米国の後退は、国際社会における米国のリーダーシップにも影響を与えます。パリ協定などの国際的な枠組みにおいて、米国のコミットメントが疑問視される可能性があり、他国との協調した取り組みにも障害となりかねません。経済的なメリットを追求する姿勢が、地球規模の課題への対応を後退させることになれば、国際社会からの信頼失墜につながる恐れがあります。

3. 科学と政治の対立の激化

今回の決定は、科学的知見と政治的判断との間の根深い対立を浮き彫りにしています。気候変動という、科学的に確立された事実に基づいた問題に対して、経済的合理性や産業界の利益を優先する姿勢が、地球規模の持続可能性を脅かす可能性を示唆しています。今後、気候変動対策を巡る科学界と一部政治勢力との間の緊張は、さらに高まることが予想されます。

画像: AIによる生成