
【驚きの結果】湖の訪問者数、スマホデータでここまでわかる!インフラ整備が鍵を握る理由とは?
湖は私たちの生活に多様な文化生態系サービスをもたらしますが、その恩恵は十分に定量化されていません。特に、レクリエーションの場としての湖の利用状況を正確に把握することは、その価値を評価し、持続可能な管理計画を立てる上で不可欠です。しかし、従来の調査方法では、時間的・空間的な制約から、湖への訪問者数を包括的に把握することが困難でした。近年、インターネットやスマートフォンの普及により、「 voluntarios geographic information(VGI)」と呼ばれる、市民が自発的に提供する地理空間情報が注目されています。本記事では、Flickr、eBird、iNaturalist、Twitter、Gaia GPSといった多様なVGIソースが、湖への訪問者数推定にどのように貢献し、その結果が湖の管理や保全にどう活かせるかを解説します。
多様なVGIソースが湖の訪問者数推定を強化
VGIの可能性と従来の課題
湖は、飲料水の供給、生物多様性の維持、そして釣り、ボート、水泳、キャンプといった多様なレクリエーション機会の提供など、人間社会に多岐にわたる恩恵をもたらしています。これらの恩恵、特に非物質的な文化生態系サービス(CES)の価値を定量化することは、しばしば困難を伴います。レクリエーションの場としての価値を評価するために、現地での訪問者数調査が頻繁に用いられますが、従来の調査手法、例えば対面での聞き取り調査や、限られた場所でのセンサーによるカウント、郵送アンケートなどは、データの収集範囲が限定的であり、時間的・空間的な偏りが生じやすいという課題がありました。これにより、湖の利用実態を網羅的に把握することが難しく、その価値の過小評価につながる可能性も指摘されてきました。
VGIソースの比較と有効性
本研究では、5つの異なるVGIソース(Flickr、eBird、iNaturalist、Twitter、Gaia GPS)の有効性を比較検証しました。これらのソースは、自然との関わり方や目的が異なる多様な湖の利用者を反映していると考えられます。分析の結果、これらすべてのVGIソースが、訪問者数推定モデルにおいて重要な貢献をすることが明らかになりました。特に、TwitterとGaia GPSを組み合わせたモデルが最も高い予測精度を示し、単一のVGIソースのみを用いるよりも、複数のソースを組み合わせた方が、より包括的で精度の高い訪問者数推定が可能であることが示されました。これは、各VGIプラットフォームが異なるユーザー層や利用目的を捉えているため、多様な湖の利用実態をより良く反映できることを示唆しています。
VGIデータ活用のための考慮事項
VGIデータの活用は、湖の訪問者数推定における強力なツールとなり得ますが、いくつかの留意点も存在します。まず、各VGIソースは特定のユーザーグループを反映する傾向があるため、どのVGIソースがどのような文化生態系サービス(CES)と関連しているかを理解することが重要です。例えば、Gaia GPSはアクティビティサービス、Flickrは美的景観の記録、eBirdは自然とのつながりを反映する可能性があります。しかし、これらの関連性は単純ではなく、一つのVGIソースが複数のCESを反映したり、逆に一つのCESが複数のVGIソースで捉えられたりする場合があります。したがって、VGI分析による生態系サービスの評価を自然資源管理や計画に役立てるためには、各データソースがどのようなCESをどの程度反映しているのか、あるいは反映していないのかを理解することが不可欠です。また、VGIデータは、年齢層や性別などの人口統計学的偏りを持つ可能性があり、すべての湖利用者層を代表するものではないという限界もあります。そのため、VGIデータによる推定を、現地調査やアンケート調査などの他の手法と組み合わせることで、より網羅的で信頼性の高い評価を目指すことが推奨されます。
湖の訪問者数を左右する要因:インフラの重要性
訪問者数を引きつける湖の魅力
湖の訪問者数を左右する要因を明らかにするため、研究チームは、湖とその周辺の公園に存在する公共施設(公園、トイレ、休憩所、遊び場、水泳場、桟橋、ボート乗り場など)、水質、そして樹木被覆率に関する情報を収集しました。これらの要素は、自然資源管理者がある程度影響を与えることができ、過去の研究でも、水質や整備された施設、自然景観が訪問者の選択に影響を与えることが示されてきました。特に、湖畔に整備されたインフラ、すなわち公園、トイレ、休憩所、遊び場、水泳場といった施設群は、湖の訪問者数に最も強く影響する要因であることが明らかになりました。これは、自然の景観だけでなく、人々が快適に過ごせるための設備が、湖への訪問を促進する上で非常に重要であることを示唆しています。
インフラ整備と利用促進の可能性
本研究の結果は、湖の利用を促進するためには、単に自然環境を保全するだけでなく、アクセスしやすい公共施設やレクリエーション施設を整備することが効果的であることを示しています。例えば、湖畔に公園や遊び場、水泳場などを整備することで、より多くの人々が湖を訪れるようになります。これは、特に都市部や郊外の湖において、人々のウェルビーイング向上やヒートアイランド現象の緩和に貢献する可能性があります。一方で、水質やボート乗り場、樹木被覆率といった要素は、湖の訪問者数との間に統計的に有意な関係は見られませんでした。これは、調査対象となった湖では、これらの要素が訪問者数を決定づけるほどの大きな差とならなかった、あるいは、他の要因(特にインフラ)の影響がより強かったためと考えられます。ただし、樹木被覆率については、自然との触れ合いを求める人々にとっては重要な要素であり、その効果は利用者の目的によって異なるとも考えられます。
持続可能な湖の利用に向けた課題と展望
湖の利用は、人々の生活に多くの恩恵をもたらす一方で、自然環境への負荷も考慮する必要があります。例えば、過剰な利用は、水域や岸辺の生息地の質の低下、生物の行動変化、水質汚染などを引き起こす可能性があります。これらの問題に対処するためには、レクリエーションの需要と生態系への影響とのバランスを取ることが重要です。本研究で示されたように、インフラ整備は湖の利用を促進する強力な手段ですが、その一方で、自然環境の保全や、多様な文化生態系サービス(CES)の提供との両立も考慮しなければなりません。特に、湖へのアクセスや提供されるサービスには、地域や社会経済的地位によって格差が存在する可能性があり、将来の計画においては、こうした公平性の問題にも配慮する必要があります。例えば、特定のレクリエーション(釣りやボート)に特化した施設だけでなく、より広範な人々が利用できる公園や水辺空間の整備を進めることが、より公平で持続可能な湖の利用につながるでしょう。また、湖の利用計画においては、生態系への影響を最小限に抑えるためのゾーニング(区域分け)なども有効な手段となり得ます。最終的に、VGIデータは湖の訪問者数を推定するための有用なツールですが、それはあくまで現地調査データを補完するものであり、両者を組み合わせることで、より効果的な湖の管理と保全が可能になると考えられます。