
ドバイ・ウォッチ・ウィーク2025:伝統と革新が融合した最新時計10選
2025年11月19日から23日にかけて開催された第10回ドバイ・ウォッチ・ウィークは、高級時計業界における世界有数のイベントとしての地位を不動のものとしました。ブルジュ・ハリファを背景に、ロレックス、オーデマ ピゲ、ショパール、LVMHグループのトップをはじめとする著名なCEOが参加するパネルディスカッションが行われ、業界の未来について活発な議論が交わされました。また、フィオナ・クルーガーやアトリエ・ウェンといった職人によるマルケトリーやマルテェなどの伝統技術を紹介するワークショップやセミナーも開催され、参加者は時計作りの奥深さに触れる機会を得ました。特に、イベントの主催者であるアーメド・セディキ&サンズは、創業75周年を記念して数々の新作を発表し、業界への多大な貢献を称えました。本記事では、この注目のイベントで発表された、特に注目すべき最新時計の中から厳選したモデルをご紹介します。
注目の新作時計:伝統と革新の融合
Bremont Terra Nova Jumping Hour Aventurine / Bremont Altitude Perpetual Calendar GMT Mono-pusher
Bremontは、アベンチュリンダイアルを採用した限定50本の「Terra Nova Jumping Hour Aventurine」と、Agenhorと共同開発した新ムーブメントを搭載し、永久カレンダーとGMT、モノプッシャーを初搭載した「Altitude Perpetual Calendar GMT Mono-pusher」を発表しました。前者は夜空をイメージしたデザイン、後者は複雑な機能性を洗練されたデザインで実現しています。
Bulgari Octo Finissimo Mattar Bin Lahej
ブルガリの超薄型Octo Finissimoコレクションに、アラブ首長国連邦副大統領兼首相のシェイク・モハメド・ビン・ラシド・アル・マクトゥームの言葉をレーザー彫刻した特別なモデルが登場。チタニウム製ケースに刻まれた「未来は、想像し、設計し、実行できる者のものである。未来は待つのではなく、今日設計し、築くことができる。」というメッセージは、タイムピースに深い哲学的な意味合いを与えています。
Chopard L.U.C Grand Strike
ショパールは、ブランド史上最も複雑な「L.U.C Grand Strike」を発表しました。グランドソヌリ、プチソヌリ、ミニッツリピーター、トゥールビヨンを搭載したこのモデルは、11,000時間以上の研究開発を経て誕生し、10件の特許を取得しています。限定生産ではなく、年間約2本のみ製造される希少なモデルです。
Doxa SUB 300 Beta DWW 2025 Edition
ドクサとセディキのコラボレーションによる「SUB 300 Beta DWW 2025 Edition」は、ドクサの象徴的なチェリーダイアルをブラックセラミックケースに収めた限定11本のモデルです。300mの防水性能を備え、COSC認定の自動巻きムーブメントを搭載しています。
Gerald Charles Maestro GC39 Remaster Diamond Baguettes
故ジェラルド・ジェンタが愛したジャンピングアワー機能を特徴とする「Maestro GC39」の特別エディション。60個のバゲットカットダイヤモンドがセットされ、ドバイ・ウォッチ・ウィークでは、ブランドのアトリエ・ミュージアムが展示スペースに設けられ、来場者は伝統的なダイヤル加工技術を体験できました。
Girard-Perregaux Laureato Three Gold Bridges
ジラール・ペルゴは、1975年発表のアイコン「Laureato」と、1867年に発表された「Three Bridges」デザインを融合させた「Laureato Three Gold Bridges」を発表。41mmケースに、418個の手作業による面取りを含む新開発のGP09620ムーブメントを搭載した限定50本モデルです。
H. Moser & Cie. Streamliner Perpetual Moon Concept Meteorite
H. モーザー&シィは、ナミビアで発見されたギベオン隕石をダイアルに使用した「Streamliner Perpetual Moon Concept Meteorite」を発表。隕石特有のウィドマンシュテッテン構造を活かし、ブランド特有のフュメ加工が施されたダイアルは、まさに宇宙の芸術品です。
Hublot Big Bang All Black Ahmed Seddiqi 75th Anniversary / Hublot Big Bang Titanium Grey Ahmed Seddiqi 75th Anniversary
ウブロは、セディキの75周年を記念した2つの限定モデルを発表しました。43mmのブラックセラミックケースにアラビア数字が配された「Big Bang All Black Ahmed Seddiqi 75th Anniversary」(限定10本)と、ポリッシュ&サテン仕上げのチタニウムケースにグレーダイアルの「Big Bang Titanium Grey Ahmed Seddiqi 75th Anniversary」(限定25本)です。
Louis Vuitton Escale in Ornamental Stones
ルイ・ヴィトンは、ターコイズとマラカイトを使用した「Escale in Ornamental Stones」を発表。20世紀後半のドレスウォッチにインスパイアされたデザインで、40mmプラチナケースのケースバンドにも同素材が使用されています。各バリエーション30本限定です。
MB&F HM11 Art Deco editions
MB&Fは、ドバイ・ウォッチ・ウィークを記念し、1930年代のアール・デコ建築様式を取り入れた「HM11 Art Deco」を発表。42mmチタニウム製ケースには、時刻、パワーリザーブ、温度表示、時刻設定の4つの機能を備えたキャリバーを搭載。ブルーとグリーンのバージョンがあり、それぞれ10本限定です。
ドバイ・ウォッチ・ウィークが示す時計業界の未来像
伝統技術の継承と現代的解釈の重要性
ドバイ・ウォッチ・ウィークで発表された数々の新作は、伝統的な時計製造技術が単なる過去の遺産ではなく、現代のイノベーションの基盤となっていることを示しています。例えば、ジラール・ペルゴの「Laureato Three Gold Bridges」は、クラシックなデザインに最新のムーブメント技術を融合させ、MB&Fの「HM11 Art Deco」は、アール・デコの建築様式を時計デザインに昇華させています。これは、時計ブランドが過去の栄光を尊重しつつも、それを現代の感性や技術で再解釈することの重要性を示唆しています。
地域市場の台頭とグローバルな影響力
ドバイ・ウォッチ・ウィークが、世界で最も影響力のある時計見本市の一つへと成長したことは、中東市場の目覚ましい台頭を象徴しています。ウブロのCEOが語るように、この地域は単なる消費地ではなく、時計業界における創造性、職人技、そして未来志向といった価値観を共有する重要なパートナーとなっています。今後、ドバイのような地域が、世界の時計トレンドを形成する上で、さらに大きな役割を果たすことが予想されます。
多様性と包括性がもたらす新たな価値
今回のイベントでは、多様な背景を持つブランドや職人が参加し、それぞれのユニークな視点や技術を紹介しました。ブルガリがアラブの芸術家とコラボレーションしたように、異文化間の融合は、時計デザインに新たなインスピレーションと深みをもたらします。このような多様性と包括性は、時計業界がより幅広い層のコレクターや愛好家を惹きつけ、業界全体の持続的な成長に貢献する鍵となるでしょう。