
偶発的な40億円の証拠金で20分で1.75億円の利益を得たF&Oトレーダー、インド高等裁判所は利益保持を認める:その理由とは?
2025年12月3日、インド高等裁判所は、証券ブローカーのシステムにおける技術的グリッチ(誤り)により、誤って提供された証拠金(マージン)を使用して得た利益は、ブローカーではなくトレーダーに帰属すると判示しました。これは暫定的な判決ですが、市場参加者にとって重要な示唆を含んでいます。
偶然の利益、高裁はトレーダーの「スキルとリスク」を認める
事の発端:40億円の証拠金グリッチ
事件は2025年7月26日、F&O(先物・オプション)トレーダーであるラジグル氏が、証券会社「Kotak Securities」のシステムグリッチにより、本来の残高3,175.69ルピーに対し、約40億円もの証拠金が利用可能になったことから始まりました。ラジグル氏は、この予期せぬ機会を捉え、わずか20分間で約94.81億円相当のF&O取引を実行しました。その結果、彼は20分間で1.75億円(1.75 crore)の純利益を上げました。
高裁の判断:グリッチは利益の源泉にあらず
Kotak Securities側は、誤って付与された証拠金による利益は自社に帰属すると主張しましたが、ボンベイ高等裁判所はこれを退けました。裁判所は、ラジグル氏が提示された証拠金を「利用した」だけであり、実際の利益は彼自身の取引スキルとリスクテイク能力によってもたらされたものだと指摘しました。裁判所は、もし損失が発生していた場合、ラジグル氏はその損失を返済する義務があったことを強調し、利益のみをブローカーが主張することは「不当利得」にあたると判断しました。
「不当利得」の理論は適用されず
裁判所は、Kotak Securitiesがこのグリッチによって直接的な金銭的損失を被ったことを証明できなかった点を重視しました。また、Kotak Securitiesが取引自体を有効とみなし、契約書を発行し、手数料を徴収した後に利益を主張し始めたことも、裁判所にとって不審な点でした。さらに、裁判所は、Kotak Securitiesがリスク管理システムを維持すると主張する一方で、問題解決のために利益の一部をトレーダーに提示する和解案を提示していたことにも言及し、その主張の一貫性のなさを指摘しました。
市場と規制への示唆:テクノロジーリスクと個人の責任
テクノロジーリスクの増大とリスク管理の重要性
今回のケースは、金融市場におけるテクノロジーの進化がもたらす予期せぬリスクを浮き彫りにしました。システムグリッチは、たとえそれがブローカー側の過失であったとしても、市場の公平性と安定性を脅かす可能性があります。Kotak Securitiesがリスク管理プロトコルを適切に起動しなかったという指摘は、金融機関がいかに迅速かつ効果的にシステム障害に対応すべきかという課題を提起しています。
個人のスキルと機会の捉え方
一方で、ラジグル氏の行動は、与えられた機会を最大限に活用するトレーダーの能力を示しています。裁判所が彼のスキルとリスクテイクを利益の源泉と認めたことは、市場における個人の洞察力と決断力の価値を再確認させるものです。しかし、このような「幸運」が常に報われるとは限らず、法的な枠組みの中で、個人の責任とプラットフォーム提供者の責任の線引きは今後も議論されるべき点です。
今後の展望:規制当局の対応と市場の健全性
今回の判決は、インドの証券市場における「不当利得」の解釈に一石を投じる可能性があります。今後、同様のケースが発生した場合、規制当局や裁判所がどのように判断を下すかが注目されます。金融機関は、より強固なリスク管理体制を構築し、テクノロジーへの依存度が高まる中で、予期せぬ事態への備えを強化する必要に迫られるでしょう。市場の健全性を維持するためには、技術的な問題と個人の取引行動の責任範囲を明確にすることが不可欠です。