なぜ韓国建築は「ニュー・ブルータリズム」へ向かうのか?写真家ポール・チュレットが解き明かすコンクリートの新たな可能性

なぜ韓国建築は「ニュー・ブルータリズム」へ向かうのか?写真家ポール・チュレットが解き明かすコンクリートの新たな可能性

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世界中で誤解され、冷淡なイメージを持たれがちなブルータリズム建築ですが、今、韓国という舞台でかつてない独自の進化を遂げています。作家であり写真家でもあるポール・チュレット氏は、新著『Brutalist Korea』の中で、韓国各地で見られる現代的なブルータリズムを「ニュー・ブルータリズム(nu-bru)」と定義しました。重厚なコンクリートという素材を現代建築家たちがどのように再解釈し、都市や機能と対話させているのか。韓国建築の新たな可能性を探ります。

『Brutalist Korea』が提示する11の建築傑作と新潮流

ポール・チュレット氏の新著では、韓国国内の11の建築プロジェクトが厳選され、それぞれが持つ独自の文脈が紹介されています。これらは単なるコンクリートの塊ではなく、都市や機能と深く対話する姿勢が共通しています。

彫刻的表現と素材の調和

かつてのブルータリズムが持つ「効率と反復」という枠組みを超え、彫刻的で流動的なアプローチが見られます。例えばキム・チュンオプ氏設計の「Dr Seo Women's Clinic Building」では、曲線を用いた柔らかいフォルムが周囲の硬質な環境との対比を生み出し、機能を超えた美学的な意図が強く反映されています。

機能と形態の新しい定義

ブルータリズムの持つ「厳格さ」をあえて別の用途に転用する試みも注目されています。キム・スグン氏による「Kyungdong Presbyterian Church」は、外部からは要塞のような威厳を放ちつつ、内部では宗教的静寂を追求しています。また、パジュブックシティの「House of Open Books」のように、本をモチーフにした形態が建築言語として機能する例もあり、建築の表現可能性が拡張されています。

都市に対する挑戦と存在感

紹介されている建築群の多くは、周囲の都市環境を無視するのではなく、それを再構築するような強い存在感を放ちます。例えばキム・チャンジュン氏による「Hands Corporation」の建物は、Hannum-daeroの激しい環境の中で、攻撃的にならずに自立するフォルムを模索しており、都市と建築の新しい関係性を提示しています。

ニュー・ブルータリズムが示唆する現代建築の展望

チュレット氏が提唱する「ニュー・ブルータリズム」は、過去のスタイルをノスタルジックに回顧するものではありません。このムーブメントが示唆する、現代建築の本質的な課題について考察します。

デジタル時代における「身体性」の復権

現代建築の多くが一時的なデジタル上の視覚効果を追う中で、韓国の建築群がこだわる「物理的な重厚感」や「素材の質(フィジカリティ)」は極めて今日的です。建築が情報消費の対象となる一方で、重厚なコンクリートという素材を使い、触覚や時間軸を感じさせる設計は、持続可能かつ「長く愛される空間」という課題に対する強烈なアンチテーゼとして機能しています。

建築言語の新たなスタンダードへ

ニュー・ブルータリズムとは、かつての重苦しさや対立的な側面を削ぎ落とし、光や影、そして人間の感情を揺さぶるための表現媒体としてコンクリートを昇華させる手法です。韓国は今や、この新しい建築言語の実験場となっています。流行に左右されない骨太な設計思想は、今後世界各地の建築プロジェクトが直面する、「都市の中でどのように自立し、かつ対話するか」という問いに対する一つの有効な回答として、広く参照されるようになるでしょう。

画像: AIによる生成