M5 iPad Proレビュー:AIとゲームの進化は「まだない」現実。進化の恩恵は限定的か?

M5 iPad Proレビュー:AIとゲームの進化は「まだない」現実。進化の恩恵は限定的か?

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最新のM5チップを搭載したiPad Proは、AI性能とゲーミング体験の向上を謳っていますが、現状ではその恩恵を享受できるアプリやゲームが限られています。本レビューでは、M4 iPad Proからの買い替えの必要性、AI性能の理論値と実用性のギャップ、そしてゲーミング体験の現状について、MacStoriesのフェデリコ・ヴィチッチ氏の分析を基に深掘りしていきます。

M5 iPad Proの進化点とその限界

デザインとディスプレイ:据え置きの完成度

M5 iPad Proは、外観、重量、そしてTandem OLEDディスプレイといった主要な仕様において、前モデルのM4 iPad Proとほとんど変わりません。これは、M4 iPad Proが既に高い完成度を持っていたことを示していますが、同時にM5への買い替えを強く推奨するほどの劇的な変化がないことも意味します。

M5チップ:AI性能の理論値と実情

M5チップは、AIタスクにおいてM4比で最大3.5倍の性能向上を謳っています。これは、新しいNeural Acceleratorsの搭載によるもので、特にMacにおいてはMLXフレームワークなどを活用することで、その性能を発揮できる可能性を秘めています。しかし、iPadOSにおいては、ローカルLLM(大規模言語モデル)を活用できるアプリのエコシステムが未発達であり、現状ではその性能向上が実用レベルで体感できる機会は限定的です。

ゲーミング体験:ポテンシャルは高いが、現状は…

M5チップは、レイトレーシング性能など、ゲーミングにおいても大幅な向上をもたらすとされています。しかし、iPad App Storeには、M5の性能を最大限に引き出すような最新のゲームタイトルが不足しています。Mac版ではプレイ可能なAAAタイトルもiPad版では対応していなかったり、フレームレートの上限が設けられていたりするため、現時点ではM5のグラフィック性能をフルに活かすことは難しい状況です。

考察:M5 iPad Proが抱える「エコシステム」の課題

AI性能:理論値と実用性の乖離

AppleはM5チップでAI性能を大きく向上させましたが、iPadOSにおけるAIアプリのエコシステムはまだ黎明期にあります。MLXフレームワークの利点を最大限に活かすには、macOSのようなターミナルアプリやWebからのソフトウェアインストール機能などがiPadOSには現状ありません。これにより、M5のAI性能は理論値としては高いものの、実用的な場面での活用は限定的となっています。AppleがAI分野で真剣に評価されるためには、よりオープンな開発環境と、それに対応するアプリの拡充が不可欠です。

ゲーミング:ハードウェアの進化とソフトウェアの遅延

M5 iPad Proは、レイトレーシングや高速なフレームレートに対応できるポテンシャルを秘めていますが、それを活かすゲームがiPad App Storeに不足しているのが現状です。Appleは優れたシリコンを開発しましたが、ゲームデベロッパーがその能力を最大限に引き出すようなタイトルを開発・提供しない限り、ハードウェアの進化は「宝の持ち腐れ」となってしまいます。Appleがコンソール品質のゲーム体験をiPadで実現するためには、デベロッパーへのインセンティブ提供や、開発環境の整備が鍵となるでしょう。

将来性:ソフトウェアの進化がM5 iPad Proの真価を引き出す

M5 iPad Proの真価は、将来的なiPadOSのアップデートや、サードパーティ製アプリ・ゲームの進化によって引き出される可能性が高いです。特に、AI分野においては、Appleが開発者に対してより多くの情報とツールを提供し、エコシステムを育成していくことが重要です。現時点では、AIやゲームの性能向上を期待してM4 iPad Proからの乗り換えを検討するほどのインパクトはないかもしれませんが、今後のソフトウェアの進化次第では、M5 iPad Proが真に「AIとゲームのアップグレード」としてその価値を発揮する日が来るかもしれません。

画像: AIによる生成