アルゼンチン、ペソ急落の陰で米国の支援とビットコインへの期待・疑念が交錯

米国は、ペソの急落、投資家の逃避、そしてハビエル・ミレイ大統領の信頼性低下に苦しむアルゼンチンに対し、金融的な支援を行う用意があることを表明しました。この状況下で、暗号資産（仮想通貨）の採用が急増しています。アルゼンチン国民は、経済的・政治的不確実性から逃れるため、より安定した代替資産を求めています。

米国の支援表明と市場の反応

米国は、アルゼンチンを「ラテンアメリカにおけるシステム上重要な同盟国」と位置づけ、通貨スワップや直接的な通貨購入、財務省交換安定化基金の活用など、安定化のためのあらゆる選択肢を検討していることを明らかにしました。この支援表明を受けて、アルゼンチンのMerval株価指数は一時的に上昇しましたが、年初来では依然として大幅な下落となっています。中央銀行はペソ防衛のために多額の外貨準備を投じていますが、その外貨準備高は限られています。

ミレイ政権の経済改革と課題

大統領就任以来、ミレイ氏はアルゼンチンの財政再建に苦慮しています。著名な「ビットコイン・スタンダード」の著者であるサイフェディン・アムース氏は、ミレイ氏の政策がむしろ国の状況を悪化させていると批判しています。アムース氏は、インフレ抑制の失敗や、リバタリアン的な姿勢とは裏腹にマネーサプライの大幅な拡大を指摘しています。インフレ率はミレイ氏就任以来大幅に低下したものの、依然として二桁台で推移しており、国民の生活を圧迫しています。

暗号資産への逃避と採用の加速

ペソの管理変動相場制にもかかわらず、選挙の不確実性からアルゼンチン国民はより安定した代替資産、特に米ドル連動型ステーブルコインを求めています。ある暗号資産取引アプリのビジネスマネージャーによると、特に選挙期間中はステーブルコインの購入が急増し、同社では2024年以降で最高の日次取引量を記録しました。政治的・経済的な混乱が続く中、アルゼンチン国民は政治的・経済的不確実性に対するリアルタイムのヘッジとしてステーブルコインに頼り続けています。ビットコインも価値の保存手段として注目されており、一部では米ドルよりも魅力的になっています。

ペソ危機を巡る今後の展望と暗号資産の役割

米国支援の限界と構造的課題

米国による金融支援は短期的な安定をもたらす可能性がありますが、アルゼンチンの根深い構造的な経済問題、すなわち慢性的なインフレと財政赤字を根本的に解決するものではありません。過去にも同様の支援が行われましたが、問題が再発してきた経緯があります。ミレイ政権の改革が持続可能であるか、また国民の支持を得られるかが、今後のアルゼンチン経済の行方を左右する重要な要素となります。

暗号資産が示す新たな可能性

今回のペソ危機は、アルゼンチン国民が従来の金融システムへの不信感を強め、代替資産としての暗号資産、特にステーブルコインやビットコインへの関心を高めていることを浮き彫りにしました。これは、経済的混乱に直面する新興国において、暗号資産が単なる投機対象ではなく、実用的な金融ツールとしての可能性を秘めていることを示唆しています。今後、規制当局の動向も注目されますが、国民のニーズに応える形で暗号資産の利用はさらに拡大していく可能性があります。